夏への扉

『夏への扉』って猫SFって言われてるけど、読んでみると…

夏への扉 - 書籍情報
  • 著者:ロバート・A・ハインライン
  • 翻訳者:福島正実
  • 出版社:早川書房
  • 作品刊行日:1956年
  • 出版年月日:2010/01/30
  • ページ数:383
  • ISBN-10:415011742X

BOOK REVIEWS

夏への扉という小説をご存知でしょうか。まずはその表紙を見て欲しいのですが、猫が扉の前にいて、扉が開くのを待っているみたいな感じが第一印象として目に飛び込んでくると思います。

…が、よく見てみるとその扉の光には人間の目が描かれているのです。

え!?なにそれ、怖い!なんて最初に気がついた時には思ったわけですが、この本、ホラーではありません。SFです。しかしSFはSFでも宇宙でドンパチするようなSFではありません。猫が悪者と勇敢に戦う系のSFです。

一人の人間が恋人に裏切られ、友人に裏切られ、人生のどん底から這い上がっていく系のSFです。

「いや、それ何系のSFやねん!」と思われるかもしれませんが、SFが苦手だと豪語していた僕が、SFおもしれーっ!!とSF小説を漁り始めたきっかけになったSFです。ちまたでは、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のアイディアの元になった小説として有名です。

1956年に書かれた作品であるにも関わらず、非常に読みやすく、当時の未来である2000年の事を書いた内容にも関わらず、実際の2000年との類似点が多々あるという作者の恐るべき想像力。

そして何より、この作品の主人公。これがもうスティーブ・ジョブズなんじゃね!?っていうぐらい読者に愛されそうなキャラなのです。ねこ、かわいい。かわいい、ねこ。ふがふが。にゃおーん。猫好きのあなたは必見の小説なのです。猫SFの代表作なのです。

…あ、このままでは、何言ってんのこいつ?と思われて終わりそうなので、早速あらすじや内容紹介の方に入っていきましょう。

きっとあなたは夏への扉を探したくなるはず…。

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小説『夏への扉』 – ロバート・A・ハインライン・あらすじ

夏への扉
4.3

著者:ロバート・A・ハインライン
翻訳:福島正実
出版:早川書房
ページ数:383ページ

コールドスリープが一般化したロサンゼルス。発明家のダンは愛猫のピートと共に長い冬眠に入ろうとしていた。というのも、戦争から復員後、戦場で親友となった企業人のマイルズと共に会社を起こし、秘書のベルとも結婚の話を進めるなど、人生は順調で幸福の生活を送っていたはずなのだが、そのマイルズとベルに裏切られ、全てを失ってしまったからなのだ。しかし、30年もの長い眠りにつく決意をすると、途端に二人への復讐心が再熱してきた。彼は愛猫ピートを連れたまま、二人の元へ向かうのだが…

読書エフスキー3世 -夏への扉篇-

文豪型レビューロボ読書エフスキー3世-夏への扉
前回までの読書エフスキーは

あらすじ
書生は困っていた。「あぁ…。1分前の自分にタイムトラベルしたい」と仕事中に寝言を言ったせいで、独り、無料読書案内所の管理を任されてしまったのだ。すべての本を読むには彼の人生はあまりに短すぎた。『夏への扉』のおすすめや解説をお願いされ、あたふたする書生。そんな彼の元に22世紀からやってきたという文豪型レビューロボ・読書エフスキー3世が現れたのだが…

夏への扉 -内容紹介-

無料読書案内の書生
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大変です!先生!ロバート・A・ハインラインの『夏への扉』の事を聞かれてしまいました!『夏への扉』とは一言で表すとどのような本なのでしょうか?
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
“日本人が大好きなSF小説”デスナ。
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…ん?と、言いますと?『夏への扉』は海外では人気ないんですか?

 六週間戦争のはじまる少しまえのひと冬、ぼくとぼくの牡猫、護民官ペトロニウスとは、コネチカット州のある古ぼけた農家に住んでいた。マンハッタンの被爆地帯の端にあたったし、古い木造家屋というものはティッシュ・ペーパーに火をつけたようによく燃えるから、今でも、まだあの農家がそこに建っているかどうかは疑問だ。おそらくはあるまい。よし建っているにしても、死の灰が降ったから、価よく貸すというわけにはいかないだろう――が、当時ぼくら――つまり、ぼくとピートは気に入っていた。下水がなかったので家賃は安かったし、居間だった部屋に置いたぼくの製図机に、冬の陽ざしがよく当たった。
 ただし欠点があった。この家は、なんと外に通ずるドアが十一もあったのである。

引用:『夏への扉』ロバート・A・ハインライン著, 福島正実翻訳(早川書房)

読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
コンナ一文カラ始マル“ロバート・A・ハインライン”ノ1956年の作品デス。読メバワカリマス。
無料読書案内の書生
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えーっと、それでは困るのです。読もうかどうか迷っているみたいですので。ちょっとだけでも先生なりのご意見を聞かせていただきたいのですが。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
読む前にレビューを読むと変な先入観が生マレテシマイマスノデ…
無料読書案内の書生
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ええい、カタカナ混じりで読みづらい!(ポチッと)
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
ゴゴゴゴゴ…悪霊モードニ切リ替ワリマス!
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うぉおおお!先生の読書記録が頭に入ってくるぅぅー!!
夏への扉_批評

夏への扉 -解説-

読書エフスキー3世
読書エフスキー
猫は好きですか?
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書生
え?猫ですか?家に4匹飼っているぐらい、大の猫好きですね。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
じゃあ、もう問答無用でこの小説を読みましょう。
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書生
えー!?猫好きにおすすめの小説なんですか?
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
いえいえ。そんな事ありません。
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書生
猫好きなら問答無用で読みましょうって言ってたじゃないですか!
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
ぶっちゃけ、この小説、猫は最初と最後の方しか登場しません
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書生
それじゃあ、猫好きかどうかは聞く必要ないじゃないですか。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
たとえばそれって、アニメ『ドラえもん』にドラえもんが出てこないシーンは見る価値がないって言っているのと一緒ですよ。
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書生
そんな事言ってないですよ!
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
…とまぁ、三文芝居はこのぐらいにしておいてですね、この小説は猫が表紙に描かれているし、世間では猫SFと呼ばれている割に、実は猫は最初と最後の方にしか出てこないんですよ。
無料読書案内の書生
書生
…えーっと、そもそもこれは何の話なんです?SFと猫って聞くと、ロボットで出来た猫、つまりドラえもんぐらいしか想像出来ないんですけど。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
まぁ、早い話、タイムトラベルものですね。
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書生
へー。タイムトラベルかー。僕も含めてタイムトラベルものって日本人は大好きですよね。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
この小説はですね、実は海外の方ではそれほど高い評価を受けていないんですよ。この作家ロバート・A・ハインラインの代表作と言えば、夏への扉ではなく、宗教を扱った『異星の客』や社会主義者的な匂いのする『月は無慈悲な夜の女王』なんですよね。
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書生
へー。確かに宗教とか社会主義よりタイムトラベルの方が日本人は好みそうですね。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
特に『異星の客』に関してはですね、「SF界で最も有名な、というよりおそらくは最も悪名高い作品の一つに急速にのし上がってしまった長編」と呼ばれるほどなのです。
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書生
悪名高い?
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
ええ。ヒッピーのバイブルとも呼ばれているこの作品ですが、マンソン・ファミリーというカルト集団がこの作品に影響を受けて、犯罪を犯しております。
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書生
マンソン・ファミリー…。あれ?ロック・バンドのマリリン・マンソンって確か、その名前から取ったんじゃないでしたっけ。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
あー、たしかにマリリン・モンローとチャールズ・マンソンから名前を取ったらしいですね。チャールズ・マンソンがマンソン・ファミリーの教祖なんですね。あれもカルト的な人気を得たバンドでしたなぁ。よく知ってますね。
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書生
中学校の頃に、クラスでマリリン・マンソン聴いている友達がいて、ジャケット見せてもらったら怖すぎてですね、恐怖を消すために調べまくったんですよ。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
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書生
…と、何の話でしたっけ?
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
まぁ、何が言いたかったのかと言うとですね、ロバート・A・ハインラインって、いろーんなジャンルの作品を書いているわけです。右翼、左翼、宗教などなど。賞賛もされれば、物議を醸し出す事も多いわけですね。
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書生
ほほう。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
そんな中ですね、猫SFとも呼ばれる『夏への扉』が、日本で大人気なのは、なんだか日本人の人柄を表したみたいで微笑ましいじゃないですか。
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書生
では、その微笑ましいストーリーというのを聞かせてもらおうじゃないですか。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
主人公、ダニエル・ブーン・デイヴィス、通称ダン・デイヴィスは1940年生まれで、猫を飼っております。
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書生
主人公はダン。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
彼は1970年から30年間コールドスリープをする決意をします。
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書生
コールドスリープ?
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
冷凍睡眠がある世界観なんですね。ダンはコールドスリープについてこんな事を言っています。

冷凍睡眠《コールドスリープ》というものについてはたいていの人と同じように、知っているようでもあり、知らないようでもあった。もちろんぼくは、H・G・ウエルズの古典的SF『冬眠者めざめるとき』ぐらいは、保険会社が宣伝用に無料配布をはじめる以前から読んでいたし、週に二、三回は、朝の郵便の中に入ってくる保険会社のダイレクト・メールで見もしたのだが、ろくに気にも止めていなかった。冷凍睡眠《コールドスリープ》など、ぼくには、口紅の広告同様、縁もゆかりもなかったからだ。

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書生
保険会社がその役割を担っているんですねぇ。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
この作品は1956年に書かれているんですが、ダンは1970年にコールドスリープをしますから、その当時の未来を書いている事になりますね。
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書生
なるほど。今から14年も前は、まだiPhoneがギリギリなかったわけですから、時代の進化ってすごいっすよね。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
ちなみにSFってルールが重要だと思うんですけど、この作品の時代では、コールドスリープは当たり前ですが、タイムマシンは存在しない事になっています。
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書生
お?という事は、未来には行けるけど過去にはいけないって縛りがあるんですね。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
なのでね、ダンの決意は相当のものなわけですよ。
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書生
言ってみれば、浦島太郎状態ですもんね。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
んで、なぜそんな決意をしたのかと言うと、ダンは絶望していたのです。
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書生
この記事の最初に書かれていたあらすじに書かれていたやつですか?
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
まぁ、早い話そのとおりなんですが、ちょっと詳しく説明していきましょう。
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書生
お、やっとあらすじに入るんですね。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
ダンは戦争から復帰後、一緒に戦場で戦ったマイルズ・ジェントリイと一緒に会社を立ち上げます。
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書生
ほほう。時期的にベトナム戦争ですかね。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
いえ、ベトナム戦争は1955年から行われた戦争で、ダンは1940年生まれなので、別に時期的には間違ってはいないと思うんですが、作品内では六週間戦争と表記されています。
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書生
六週間戦争。随分と短い戦争ですね。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
おそらく第三次世界大戦を示唆していまして、死の灰が降ったとあるので、核戦争ですぐに終わったのでしょう。その影響でアメリカの首都はデンヴァーに移動したという表記があります。
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書生
ベトナム戦争はPTSDなどを若者に引き起こしていましたが…。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
ダンやマイルズはそういう影響は受けなかったみたいですね。すんなりと起業に成功しています。
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書生
どういう仕事を選んだんですか?
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
ダンは発明家気質でしてね、その頃から世の中は『自動化』であるべきだと目をつけたのです。
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書生
自動化。確かに今じゃ人間がやっていたことがほとんど自動化されて生活が楽になりましたね。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
ダンはまず文化女中器(ハイヤード・ガール)という商品を生み出します。
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書生
文化女中器?メイドロボみたいな?
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
いえ、真空掃除機の改良版のようで、今で言えばルンバみたいなものでしょうかね。
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書生
へー。また随分と変わったネーミングをつけますね。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
今まで女中さんがやっていた事を自動化させるっていうアイデアだったのでね。ネーミングもあいまって、これが大ヒットします。
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書生
ほほう。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
ちなみにダンは発明家でしたが、大方の発明家がそうであるように、商売の才能はありませんでした。
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書生
あー、人の生活がよくなる商品を常に考えているって事は、自分の利益とか考えずにひたすらそれに打ち込みそうですもんね。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
そしてそれをカバーしてくれたのが、マイルズだったのです。
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書生
ダンが発明して、マイルズが売り込む。お互いの役割ががっちり噛み合っていたわけですね。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
文化女中器が大ヒットした事で、新しい社員を雇うことになりました。そしてやってきたのが美人秘書のベル・ダーキンです。
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書生
美人秘書。なんかマイルズと取り合いになりそうですね。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
それがですね、マイルズはすでに結婚していて子供もいるんですよ。
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書生
あー、なら安心だ。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
ですが、それが複雑な問題でして、マイルズは奥さんを亡くしているんです。そして子供というのが、その奥さんの連れ子なんですよ。
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書生
こりゃまた複雑な…。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
その連れ子というのはリッキィと呼ばれる小さな女の子です。このリッキィがやたらとダンになついているんですね。
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書生
へー。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
んで、このリッキィは、小さい子ながら大きくなったらダンと結婚する!なんて言っているわけです。
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書生
小さい女の子なら誰でも一度は言いそうですね。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
ただ、リッキィの想い虚しく、ダンは新しくやってきた美人秘書のベルにメロメロ。ベルメロ。
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書生
ベルメロ!?先に目をつけたのはリッキィなのに、年齢には勝てなかったか…。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
この美人秘書のベルは非常に優秀な人間でしてね、秘書だけじゃなく、オフィスマネージャーも兼ねてくれたんですね。ダンはひたすら発明に没頭することが出来る。
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書生
ダンが発明して、マイルズが営業をかけて、ベルがマネージメントをする。すごくうまく回っているじゃないですか。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
そしてダンはベルと婚約しまして、順風満帆。
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書生
仕事は自分のやりたい事をやって順調で、親友と一緒に働けて、美人の奥さんを手に入れて、まさにすべてが上手くいきまくっていますね。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
ところが、ダンとマイルズは度々、ぶつかることがありました。
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書生
ん?ベルのことで?
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
いえ。ダンは発明家で時間をかけてでもより良いものが造りたい。いわゆる完璧主義なわけです。マイルズはビジネスマンでより利益を生み出したい。商品を早く作って欲しいわけです。だから二人の意見はぶつかってしまう。
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書生
あーなるほど。ダン的には完璧な商品が出来上がってから提供したいけれども、マイルズ的には早く市場に出して、徐々にブラッシュアップして完璧に近づいていけば良いじゃんって感じなんですね。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
そうです。だからバチバチやっていたんですが、ある日突然、それは終わりを告げます。
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書生
ま、まさか。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
マイルズとベルが手を組んで、ダンに不信任決議を出すんですね。
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書生
つまり、クビって事ですよね。
読書エフスキー3世
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ええ。ダンからしてみれば、全く意味がわからない。しかし、目の前には自分がサインしたと思われる書類がある。
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書生
ベルがダンを騙して、書かせていたんですね。
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ダンは自分の発明に没頭していたし、ベルからお願いされた書類にはほとんど目を通さずにサインしていた。信頼していましたからね。未来の奥さんなわけですから。
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書生
ひえぇ。ベルはなんて悪女だ。
読書エフスキー3世
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そしてダンは追い出されてしまうわけですよ。しかも、一生懸命作っていた次の発明の権利さえも奪われて…。
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書生
あぁ…。
読書エフスキー3世
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これ、まさにスティーブ・ジョブズの人生みたいに私は思いましたね。ジョブズも30歳の時に一度、自分が作ったAppleをクビにされていますからね。しかも、自分がスカウトしたペプシコーラの事業担当社長だったジョン・スカリーにです。
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書生
ジョン・スカリーと言えば、ジョブズが言った

このまま一生砂糖水を売り続けたいのか、それとも私と一緒に世界を変えたいのか?

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書生
って言葉、有名ですよね。…あれ?確かダンも1940年生まれで1970年にコールドスリープするって事は30歳ですね。
読書エフスキー3世
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あー、たしかに。まぁ、こうしてダンはすべてを失い、愛猫のピートと一緒に酒浸りの日々が始まるわけです。でもですね、ピートにはあるクセがあるのです。冒頭の部分覚えていますか?
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書生
冒頭?「ただし欠点があった。この家は、なんと外に通ずるドアが十一もあったのである。」ってやつですか?
読書エフスキー3世
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そうです。そのドアが11個もあるなか、ピートは真冬に外に出ようとするわけですよ。
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書生
猫はこたつで丸くなるって言うのに。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
ピートは信じているわけです。11個のうちのどれか1つは、明るく楽しい夏への扉があると信じて疑わないわけですよ。
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書生
なんとも前向きな猫ですね。
読書エフスキー3世
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だからダンも夏への扉を探すんですね。どれだけ苦しくとも、楽しく生きる道があるはずだと。
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書生
おお。ジョブズも確かに、アップルをクビになったからこそ、今の私があるみたいな事をスタンフォード大学でのスピーチで言ってました。
読書エフスキー3世
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まぁ、でもですね、流石にクビにされた直後はダンは落ち込んでいまして、コールドスリープしちまおうなんて考えたんですね。猫と一緒に。
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書生
あー、言われてみればそうでした。コールドスリープしなきゃそもそもSF小説が始まらない。
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コールドスリープを30年間やって、若いままの自分がババアとジジイになったマイルズとベルを見て笑ってやろうと計画するわけですね。ただ、ピートを見て思うのです。こいつは身体がボロボロになっても戦っているじゃないか。それなのに自分は…と。
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書生
家の猫もたまーに野良猫とバトルして帰ってくる事ありますよ。
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なので、戦いに車を走らせるんですね。マイルズの家へ。そしてそこには当然ベルがいる。二人は婚約していたのです。
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書生
あー、やっぱりなぁー。そうなるよなー。
読書エフスキー3世
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そしてダンはあえなく返り討ちにあってしまう。ピートは行方不明になり、ダンはベルに麻薬を打たれて、よくわからないまま、自分が契約した会社とは違うコールドスリープへ
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書生
急展開!
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ここらへんはピートの奮闘とか、読んでいて面白い所なので、ぜひご自身の目で読んでいただきたい。んで、時は2000年。
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書生
ダンの復讐劇が始まるわけですね!?
読書エフスキー3世
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…いえ。な、なんと。マイルズの会社は倒産しており、ベルも廃人となっていたのです。
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書生
な、なんですと!?それじゃあ、もう生きる目的がなくなっちゃったじゃないですか。
読書エフスキー3世
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そこで終わらないのがダンのいいところなんですよ。ダンは再び、文化女中器製造会社に就職するのです。
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書生
おわっ!まさにジョブズのAppleへの返り咲きのよう!
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…と、まぁここまでが『夏への扉』の導入部分です。
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書生
えー!まだ導入部分なの!?
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
ここからダンがどうやって夏への扉を見つけ出すのか、単なる復讐小説にならず、ダンの前向きな姿勢に心打たれる日本人大好きなタイムトラベルSF小説を是非。
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書生
もし、タイムトラベルが出来るなら、僕は確実に未来に行きますね。
読書エフスキー3世
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おや?それはなぜです?やり直したい過去はないんですか?
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書生
失敗したな〜と思う事はあっても、後悔した事はないのです。
読書エフスキー3世
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ほほう。えらく前向きですね。
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これもタイムトラベル系のお約束ですが、過去が少しでも変わると現在がガラッと変わってしまうバタフライ効果っていうのがあるじゃないですか。って事は過去をやり直したら、今の自分がいなくなっちゃうわけですよ。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
あー、バタフライ効果ってたしかにありますね。
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書生
僕はね、なんだかんだで今の自分が好きなのです。だから、今の自分は失いたくない。なので、過去はもう過去の事として、失敗も含めてオールオッケーなんですよ。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
なるほどね。それでは、未来に行ったら何を見てみたいんですか?
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それは、先生が本当に作られているのかって事ですかねぇ…。
読書エフスキー3世
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あ…。
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先生は22世紀から来たんですよね。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
まぁ、22世紀って言っても2101年から2200年で100年ぐらいのフリ幅はありますから…。
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書生
あ、それちょっとずるい。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
しかも28世紀ごろから22世紀にタイムトラベルしてやってきたって事もあるかもしれませんし。
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書生
あ!それ更にズルい!
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
ぐぬぬ。君は完全に私の事を信じていないようですね。良いんですよ、別に…。(グゴゴゴゴ…ピーピー)
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書生
え!?な、なんの音ですか!?
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
スイッチガオサレマシタ。
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書生
ス、スイッチ!?な、なんの!?
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
5, 4, 3…
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書生
ちょまっ!何のカウントっすか!!
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
2, 1…
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書生
うぉぉぉぉ!!!地球よ、さらばー!!
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
ゼロ。ボカーン!!
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書生
(ジョボボボ・・・)…あれ?何も起きてない。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
ええ。大きな声でボカーンと言っただけですから。
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書生
驚かさないでくださいよー!!…ズボン履き替えなければ。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
ま、話が飛びましたが、夏への扉は主人公に好感が持てる素晴らしい物語でしたとさ。めでたしめでたし。
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書生
あぁ…。1分前の自分にタイムトラベルしたい。

批評を終えて

読書エフスキー
読書エフスキー
以上!白痴モードニ移行シマス!コード「ケムール・ボボーク・ポルズンコフ!」
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「あぁ…。1分前の自分にタイムトラベルしたい」…って、あれ?僕は一体何を…。
職場の同僚
職場の同僚
何をじゃないよ!仕事中に居眠りこいて!1分前どころか1時間ぐらい戻って、寝てた分取り戻しなよ。
無料読書案内の書生
無料読書案内の書生
え?あれれ?読書エフスキー先生は?
上司
上司
誰だそれ。おいおい。寝ぼけ過ぎだぞ。罰として一人でここの案内やってもらうからな!
無料読書案内の書生
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えーっ!?一人で!?で、出来ないですよ〜!!
上司
上司
寝てしまったお前の罪を呪いなさい。それじゃよろしく!おつかれ〜
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ちょっ、ちょっと待って〜!!…あぁ。行ってしまった。どうしよう。どうかお客さんが来ませんように…。
お客さん
お客さん
…あのすいません、夏への扉について聞きたいんですが。
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無料読書案内の書生
(さ、早速お客さんだーっ!!ん?でも待てよ…)いらっしゃいませー!ロバート・A・ハインラインの1956年の作品でございますね。おまかせくださいませ!(…あ、考えて見ればおねしょはしてないんだな。良かった良かった)
ブックレビューテープ
 あとがき


いつもより少しだけ自信を持って『夏への扉』の読書案内をしている書生。彼のポケットには「読書エフスキーより」と書かれたカセットテープが入っていたのでした。果たして文豪型レビューロボ読書エフスキー3世は本当にいたのか。そもそも未来のロボが、なぜカセットテープというレトロなものを…。
読書エフスキー
読書エフスキー
ウィンク。パチンパチン。
夏への扉レビューお終い

名言や気に入った表現の引用

夏への扉の名言
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書生
「一杯の茶を飲めれば、世界なんか破滅したって、それでいいのさ。by フョードル・ドストエフスキー」という事で、僕の心を震えさせた『夏への扉』の言葉たちです。善悪は別として。

ぼくは、いつもピートに、専用のドアをあてがってやることにしていたのだ。この家の場合には、使わない寝室の窓に打ちつけた板切れで、そこに、ちょうどピートのヒゲの幅にねここしを切ったのである。なぜこんな面倒をしたかといえば、今日までぼくはあまりに多くの時間を、猫のためにドアをあけたり閉めたりすることに消費しすぎていたからだ——ぼくが一度計算したところによると、文明の曙光が射してこのかた、人類は九百七十八(人間)世紀分の時間を猫にかまけて費やしてきているのだ。なんなら、もっと詳しい数字を挙げてみせてもいい。

(Kindle の位置No.16-21)

コネチカットの冬が素晴らしいのは、もっぱらクリスマス・カードの絵の中だけだ。

(Kindle の位置No.26-27)

南カリフォルニアの雪は貧しくて、わずかに山々の峰にスキーヤーのための積雪があるばかり、ロサンジェルスの下町では白いものさえ見られなかった。たぶん、スモッグを押しのけられなかったのだろう。だが、冬は、ぼくの心の中にあったのだ。ぼくは健康を害してもいず(慢性の二日酔は別として)、あと数日間は年も三十のこちら側なら、無一文の貧乏人ではさらになかった。警察に追われる身でもなく、人妻を寝とってその夫につけまわされてもいなければ、執達吏から逃げまわっていたわけでもない。軽微なもの忘れの気味はあれ、不治の記憶喪失症などにかかってもいなかった。にもかかわらずぼくの胸には冬が住まって、ぼくはひたすら夏への扉を探し求めていたのである。

(Kindle の位置No.40-46)

「ちょっとお待ちを」そういうと彼は電話をとりあげた。「交換、ボーキスト博士につないでくれ」それから先の会話は、彼が秘話装置のスイッチを入れたので聞こえなくなった。だが、やがて話を終えて電話を置いた彼は、まさに金持の伯父さんが死んだばかりというような、にこやかな笑顔でぼくに向きなおった。

(Kindle の位置No.280-281)

だが、本当に問題なのは、、もしぼくが冷凍睡眠中に死亡した場合のことだった。会社は、三十年間の冷凍睡眠中にぼくが生き永らえる見込みを、十中七の確率であると主張していた。そして、会社はこの賭けのいずれか一方、加入者の選ばなかったほうを取る。これだと五分五分の賭ではないが、そんな五分五分は、もちろん望ましくないのだ。更生な賭では、胴元の側につねに見越破損高が見てあるのが普通だ。保険業というものは合法化された賭博なのだ。インチキな会社にかぎって、カモにだけいいような話をするものだ。

(Kindle の位置No.311-312)

いや、結構。ぼくは自分の心配事だけでたくさんだし、だいいち精神分析医じゃない。ぼくのあんたに対する唯一の関心事は、あんたの心臓が、体温を摂氏四度に下げた場合の試練に耐えられるか否かだけだ。耐えられようとられまいと、ぼくはどっちでもかまわない。元来ぼくは、なぜあんたがわざわざ穴の中に埋まりたいのか、そんな理由はどうでもいいのだ。むしろ、世の中から馬鹿が一人消えて結構だとおもうぐらいだ。ただぼくにも、まだ役にもたたん職業的良心の切れっぱしがあるとみえて、それが脳までアルコール漬けになっている人間を棺桶の中へ送り込むのを拒むんだよ。それ以外は、きみが誰だろうと、どんなみじめな標本だろうと、ぼくの知ったことじゃない。

(Kindle の位置No.349-355)

ぼくには、なんの証拠もないのだ。それにどっちみち、裁判なんてものは、法律屋以外には、とくするやつがないようにできているのだ。

(Kindle の位置No.420-421)

三十年も勤務すれば、会社から表彰パーティが開いてもらえ、年金もつくだろう。食事にこと欠くこともなく、会社の専用機にも飽きるほど乗れるだろう。だが、そうしているかぎり、永遠に他人の雇い人であって、自由は決して得られない。

(Kindle の位置No.478-481)

家庭の主婦で、多少なりとも奴隷所有者の天性を持っていないひとに、ぼくはいまだに会ったことがない。彼女らは、水道屋の手伝いでも苦情をいう程度の賃金で、食事はテーブルからこぼれたパン屑で満足しながら、一日十四時間も床を這いずりまわって働くことをありがたがるような女奴隷が、まだ存在すると信じているらしいのだ。

(Kindle の位置No.498)

猫好きの人間にむかって、猫嫌いが猫好きのふりをすることは難しい。世の中には猫好きがいくらかと、あと大多数の〝害のない、必要な猫であっても我慢できない〟人間とがある。もしそうでない人が、礼儀その他の理由から猫好きを装って近づくと、正体がわれてしまう。それは猫嫌いが猫の扱い方を知らないのと、猫の方がそんな社交辞令を拒絶するためだ。
 猫にはユーモアのセンスがない。あるのは極端に驕慢なエゴと過敏な神経だけなのだ。

(Kindle の位置No.645-648)

金のことにしてもそうだよ。マイルズ、きみはいったいいくらありゃ足りるんだ?いくら金があったって、一度に二艘のヨットにゃ乗れまい。一度に二つのプールじゃ泳げないんだぜ

(Kindle の位置No.887-889)

ラスト・シーンというものは、その中間のシークエンスが、一つ一つと展開していって初めて理解もでき玩味もできるものなのだ。

(Kindle の位置No.1103-1104)

訴訟に勝つよりも、訴訟に巻きこまれないことのほうが、常に結局は得だということを知っている。

(Kindle の位置No.1229-1230)

「マイルズ、ぼくはきみにあまり腹を立ててはいない。男というものが、手癖のわるい女のために、どれほど惑わされるか、これは信じがたいほどなのだ。サムスンやマーク・アントニイですら女には脆かったんだ。きみに動ずるなというのが無理なことはよくわかっているさ。いや、怒るどころか、むしろぼくはきみに感謝してるよ、と同時にきみを気の毒にも思っている」そういってぼくはベルを見やった。「きみは彼女を獲得した。いまや彼女はきみの問題だ。ぼくは、わずかばかりの金と一時的な心の平安を失っただけですんだ、だが、きみはその程度ですむだろうか? 彼女はきみにどれだけ負担をかけるだろう? 彼女はぼくをあざむいた。ぼくの親友であったきみを口説き落としてさえして、ぼくを裏切った。いつの日か彼女が、新たな男とチームを組んで、きみを裏切らないとはかぎらないのだよ。遠い未来のことじゃない。来週かもしれない。来月かもしれない。せいぜいもって、来年かもしれない。犬が自分の吐いたもののところへ戻ってくるように、手癖のわるい女は……」

(Kindle の位置No.1306-1307)

人生ってものは少しぐらい冒険しなきゃ生きていけないのよ。だから人生は面白いんじゃないの。

(Kindle の位置No.1471-1472)

ぼく脚には身体がない。だれもいない、だれもぼくのことなんか心配してくれない……

(Kindle の位置No.1642)

工業技術というものは、なによりも現実にそくした技術であり、一人の技術者の才能よりは、その時代の技術水準一般に負うところの多いものだ。

(Kindle の位置No.1840-1842)

自分がなにかに“所属”しているという感じは、なにがなし温かい、ほのぼのとした安心感をぼくに与えた。

(Kindle の位置No.1866)

こんなことになるんだったら、ぼくのフランクをあまり万能に作るのではなかった、と考えていた。昔は受付というものは、たいてい綺麗な女の子を置いていた。機械なんぞではなかったのだ。

(Kindle の位置No.1984)

ぼくの親爺がよくいっていた。法律が複雑になればなるほど、悪党どものつけいる隙も多くなるのだと。
親爺はこうもいった。賢い人間は、いつでも荷物を捨てる用意をしておくべきだ、と。

(Kindle の位置No.2067-2069)

確かにぼくは散髪代も持っていない。といって、金を借りるということは、両手に煉瓦を縛りつけて泳ぐに等しい。そしてわずかな金というものは、百万ドル返すより借りにくいものである。

(Kindle の位置No.2102)

先のことは先に、後のことは後に、だ。職を探すことは、寝るところを探すよりも先にしなければならない。先立つものが、すべてに先行するのだ……しかもその、先立つものがないときは特に。

(Kindle の位置No.2235-2237)

銀行にたっぷり預金のある男のための家はどこにでもあるし、警察も放っておいてくれる。

(Kindle の位置No.2282)

いや、だいいち、現在四十一にもなった、そしておそらくは結婚して子供もあるだろう女を見つけることそれ自体に、どんな意味があるというのだ?かつてあれほどの美と魅力とを発散させていたベル・ダーキンの、見るも無惨な今日の姿は、ぼくをしんそこ震えあがらせた。三十年という年月の恐ろしさが、今さらのようにぼくの心に浸透してきた。いや、ぼくは、リッキイが中年女になってしまったろうことがおそろしかったのではない。彼女は中年になって、ますます人の善い情け深い女になったろう。だが、果たしてリッキイはぼくを憶えているだろうか?もちろん、彼女がぼくの存在を忘れてしまうとは信じられない。しかしぼくは、彼女の追憶の中で、たんなる抽象的な〝ダニイおじさん〟——すてきな猫を飼っていた優しい〝ダニイおじさん〟になり終わってしまったのではないだろうか?

(Kindle の位置No.2741-2749)

病的な嘘つきにはたいてい一つの型があって、初めは真実から出発して、それに尾鰭をつけるもので、全くの空想の場合はめったにないという。

(Kindle の位置No.2860-2861)

チャックは、女について、女は機械に似ているが、論理ではわりきれないという持論を持っていた。

(Kindle の位置No.2969-2970)

ハンク、どうしてそんな難しいことばかりいうの。あなたたち男って、規則のための規則が好きなんだわ。

(Kindle の位置No.3230-3231)

ぼくは、じつによく、人から前に会ったことがないかといわれるのだ。ぼくの顔はきっと、ピーナツかなんぞのように、どこにでもある標準型の顔なのだろう。

(Kindle の位置No.3205)

ぼくは考えようとした。頭がずきんずきんと痛んだ。ぼくはかつて共同で事業をした、そしてものの見事に騙された。が——なんどひとに騙されようとも、なんど痛い目をみようとも、結局は人間を信用しなければなにもできないではないか。まったく人間を信用しないでなにかやるとすれば、山の中の洞窟にでも住んで眠るときにも片目をあけていなければならなくなる。いずれにしろ、絶対安全な方法などというものはないのだ。ただ生きていることそのこと自体、生命の危険につねにさらされていることではないか。そして最後には、例外ない死が待っているのだ。

(Kindle の位置No.3876-3881)

十一の子供にむかって、世の中にはどんな貴重な荷物でも、捨てて行かねばならないときがあると、どう納得のさせようがあろう?子供はたった一体の人形のためにでも、あるいは象の玩具ひとつのためにでも、燃えさかる建物の中へとって返すのだ。

(Kindle の位置No.4138-4140)

だってお祖母さん、人間はどうしても少しは罪のない嘘をつかなきゃ、おたがいに仲良く暮らしてはいけないって前からいってたもの。嘘っていうものは、悪用しちゃいけないけど、つかわなきゃならないときもあるんですって

(Kindle の位置No.4144)

時間の〈パラドックス〉とか、〈時代錯誤〉をひきおこすことを、心配などはしない。もしも、三十世紀の技術者がタイムマシンの欠陥を克服して、時間ステーションを設け時間貿易をするようになれば、それは当然おこってくる。世界の造物主が、この世界をそんなふうに造ったのだから、仕方がないのだ。造物主は、われわれに目を、二本の腕を、そして頭脳を与え給うた。その目と、手と、頭脳とでわれわれのやることに、〈パラドックス〉などあり得ないのだ。造物主は、その法則を施行するのに、お節介な人間など必要としないのだ。法則は、自らそれ自体を施行する。この世には奇跡などないのだし、〈時代錯誤〉ということは、語義学的には、なんの意味も持っていないのだ。

(Kindle の位置No.4450-4456)

世の中には、いたずらに過去を懐かしがるスノッブどもがいる。そんな連中は釘ひとつ打てないし、計算尺ひとつ使えない。ぼくは、できれば、連中を、トウィッチェル博士のタイムマシンのテスト台にほうりこんで、十二世紀あたりへぶっとばしてやるといいと思う。

(Kindle の位置No.4462)

読書エフスキー3世
読書エフスキー
引用:『夏への扉』ロバート・A・ハインライン著, 福島正実翻訳(早川書房)

夏への扉を読みながら浮かんだ作品

バック・トゥ・ザ・フューチャー
4.6

公開日:1985年07月03日
ジャンル:冒険映画, コメディ映画, SF映画
監督:ロバート・ゼメキス
出演:マイケル・J・フォックス, クリストファー・ロイド

読書エフスキー3世
読書エフスキー
おや?映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』ですか。
無料読書案内の書生
書生
やっぱり、アイデアの元となった小説と呼ばれているだけあって、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を思い出しました。っていうか、SFの知識が浅いだけなのかもしれないですけどね。類似点は少ないですが、どちらもすんごく好きな作品になりました。

レビューまとめ

夏への扉まとめ

ども。読書エフスキー3世の中の人、野口明人です。世間はコロナやら熱中症で大騒ぎですが、僕はといえば謎の腹痛に悩まされて1週間ほど寝込んでおりました。

そして、お腹の調子が良くなった朝の事。iPhoneが全く電源が入らなくなりました。数ヶ月後に出る予定だった5G対応の携帯を諦め、すぐに購入しました。

その新しい携帯が届いて、乗り換え作業を行っている頃、頭上で突如すごい爆発音がなって、部屋が真っ暗になりました。

どうやらシーリングライトの寿命が切れたみたいで、新しいモノを注文する間、3日ほど真っ暗な部屋で暮らしました。

…とまぁ、こんな感じで不運な事続きでしたが、僕はめげません。夏への扉を探し続けます。前置きが長すぎましたね。

さて、今回扱った『夏への扉』ですが、この作品、記事の中にも書きましたが、日本のファンが選ぶSF小説のランキングには常に上位に君臨するのに、海外や専門家の方々の評価は芳しくないようです。

なんでなんだろうなぁ〜なんて考えてみるんですが、どうにも僕は日本人でして、しかもこういうタイムトラベルものが大好きな人間なので、公平な評価がくだせません。あえて言えば、他の物語に比べると、主人公が成長していない所でしょうか。

それは別に悪い意味ではなく、常に前向きで向上心の塊のような主人公なのです。最初はダメダメで、出来事を通して成長する物語を良しとするのであれば、この作品は当てはまらないのかもしれません。

もちろん、主人公は戦争で家族と妹を亡くして、えらく落ち込んだみたいな表現もあるにはあるんですが、深くは描写せず、とにかく明るい印象が強いです。

さらには、ジンジャエールを好んでなめるピートという猫の存在。ピートは喧嘩も強く、めげる事を知りません。そんな主人公と猫がセットでいるわけですから、もう最強です。どんなに困難に遭遇しても、前向きさとユニークさで乗り越えていく強さがこの作品にはあります。

なんというか、やはり強く生きていくには貫く信念っていうのが必要なんだなぁ〜って思いましたね。根拠がなくとも、信じぬける信念が。一本、ずしんと強い芯を持っている人間は強い。それを一貫して見せてもらいました。

そしてなにより最後にはキレイにハッピーエンド

タイムリープものの醍醐味である、何度も繰り返すというシーンは出てきませんし、繰り返しても抜け出せない苦悩みたいなのが出てこないので、そーゆーのが好きな場合は物足りなさを感じるかもしれません。

それでも、最後を迎えた時には、ぱっちりとパズルのピースがハマったような爽快感があります。あー!そういう事だったのね!と。

あとはあれですかね、SFって何でもありってわけじゃなくて、ちゃんと理論的に説明されている所がファンタジーと違うわけですが、細かなギミックの説明がしっかりしてあるのも特徴ですかね。

読んでいて、マジでこれ本当にあるんじゃないの?っていうぐらいそれっぽく説明してくれています。メモリー・チューブってのが出てくるんですが、その説明なんて、マジでこれ1956年に書かれたの?ってぐらい、現在のコンピュータっぽいですよ。

コールドスリープについても、本文にはこんな感じで書かれています。

人間の身体を冷却させて、新陳代謝を一時完全に中止させる方法は、すでに三〇年代から、理論的には広く知られていた。しかし、この六週間戦争の勃発までは、それはたんに研究室内の実験であるか、ないしは望みの綱の切れた病人に外科手術を行なう際に限って用いる最後の方法としてしか考えられていなかった。だが、金と人材とを惜しまなければ、どんなことでもできるものだ。血液停滞、冷凍睡眠、仮死状態、新陳代謝人工減少――どう呼んでもそれは勝手だが、兵器廠の兵站医学課は、人間を材木かなにかのように積んでおいて、必要に応じて蘇生させて使う方法をついに発見していたのだった。まずその人間を麻酔し、つぎに仮死状態にしてから冷却を始め、摂氏四度――つまり水が氷の結晶をともなわぬマキシマムの比重に、体温を保つようにする。これでOK。人間は文字どおり完全な人的資源となり、必要に応じて蘇生させるまで冬眠しつづける。

こう書かれると、摂氏四度でやれば、OKなのかー!なんて考えちゃうじゃないっすか。コールドスリープというものがあるのだ!って言い張るんじゃなくて、それを現実に行うにはどのような原理なのかが説明されているんですよ。

しかも、人が30年も寝たら、起きた時にどうやって生きていくのか。経済的問題があるじゃないですか。それもね、納得行く感じで説明されているんですよ。それ読んだらね、マジで出来るならコールドスリープやってみたいわ!って思ってしまうぐらい。

人間の想像力ってすごいですね。想像できる事はすべて実現できるって言葉を信じたくなってしまう。

主人公の強さもあいまって、良い未来を想像出来るのなら、きっと未来は良いものになるはず。そう思わせてくれる作品でした。

あ、ちなみに日本人がタイムトラベル物が好きって話ですが、実は学校でも習ったであろう日本最古の公式の歴史書である日本書紀にタイムトラベルものが載っているんですよ。あれが編纂されたのが8世紀ですから、DNAに刻まれているんですねきっと。

浦嶋子って書かれているらしいですが、これが俗に言う浦島太郎ってわけですね。

亀助けたのに、最後は玉手箱開けて、爺になってなんて不幸な物語なんだ。乙姫さま何渡してくれてんねん!って、詳しく浦島太郎を調べるまでは思っていた僕ですが、実は浦島太郎ってそういう話じゃないっていうのも面白かったです。

興味があれば調べてみてくださいませ。

なんか余計な話ばっかりした気がしますが、そんな感じで、『夏への扉』でした。

ここまでページを閉じずに読んで頂いて本当にありがとうございます

面白かった!と思ったあなたはチャンネル登録をお願いします!…とYouTuberよろしく言いたい所ですが、これはブログなので、チャンネル登録がないのが残念な所。良かったら別の記事も読んでいただけると嬉しいです。

最後にこの本の点数は…

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夏への扉 - 感想・書評

夏への扉
4.3

著者:ロバート・A・ハインライン
翻訳:福島正実
出版:早川書房
ページ数:383ページ

夏への扉
  • 読みやすさ - 91%
    91%
  • 為になる - 82%
    82%
  • 何度も読みたい - 92%
    92%
  • 面白さ - 95%
    95%
  • 心揺さぶる - 90%
    90%
90%

読書感想文

とにかく主人公がスティーブ・ジョブズのように、逆境に負けずに力強く歩んでゆく姿が描かれています。こんなタイムトラベルものが1956年にすでに存在していたなんて、人間の想像力は偉大です。何かにめげそうになっているあなたはぜひコレを読んで、どんなときでも夏への扉を探す力を手に入れてくださいませ。

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夏への扉
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