- 著者:ダン・シモンズ
- 翻訳者:酒井昭伸
- 出版社:早川書房
- 作品刊行日:1996年
- 出版年月日:2002年02月28日
- ページ数:1052
- ISBN-10:4150113890
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エンディミオンというダン・シモンズの小説。これはTVアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』を観たことがある人ならもしかしたら知っているタイトルかもしれません。
ダン・シモンズのハイペリオンシリーズは全部で4作品ありますが、3作品目である『エンディミオン』こそが長門有希の100冊に選ばれているのです。
まぁ、長門有希の100冊ってなんやねんっていう人もいるかもしれませんが、これは『ザ・スニーカー』という雑誌が2004年12月号に掲載した企画の事。
アニメに登場する長門有希というキャラクターは、読書好きでして、登場する度に常に本を読んでいます。そして感情をほとんど外に出さないので、何を考えているかわからない。
そんな長門有希の本棚を見れば、彼女が普段何を考えているのかわかるのではないのか?という趣旨のもと100冊のおすすめ本を紹介した企画です。
ただ、ちょっと調べてみればわかりますが、ハイペリオンシリーズで唯一大きな賞を受賞していないのがこの『エンディミオン』。
もちろん、賞を受賞したから面白い、受賞していないから面白くないという事は言えないわけですが、いろんなレビューを見てみると、『ハイペリオン』より見劣りするという声が多いのも事実です。
ではなぜ、長門有希は数々の賞を受賞した『ハイペリオン』ではなく『エンディミオン』をおすすめしたのか。
そんな事を思いながら実際にハイペリオンシリーズをすべて読んでみましたが、驚いたことに4作品の中で一番好きだったのが『エンディミオン』でした。
その理由は?
そんな事も含めて『エンディミオン』についてレビューしていきたいと思います。
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小説『エンディミオン』 – ダン・シモンズ・あらすじ
読書エフスキー3世 -エンディミオン篇-

あらすじ
書生は困っていた。「味方と敵のどちらにも正義がある設定は胸アツ!」と仕事中に寝言を言ったせいで、独り、無料読書案内所の管理を任されてしまったのだ。すべての本を読むには彼の人生はあまりに短すぎた。『エンディミオン』のおすすめや解説をお願いされ、あたふたする書生。そんな彼の元に22世紀からやってきたという文豪型レビューロボ・読書エフスキー3世が現れたのだが…
エンディミオン -内容紹介-



あなたがどんなつもりでこの文章を手にとったにせよ、十中八九、その目的は的はずれだ。
救世主との――ぼくらの救世主との――セックスがどんなものかを知りたいのなら、この先を読んではいけない。それではただの覗き屋だ。
老詩人の『詩篇』の愛読者として、ハイペリオン巡礼たちのその後を知りたいのなら、この文章にはきっと失望をいだく。彼らの大半の身になにが起こったかをぼくは知らない。なんといっても、彼らはぼくが生まれる三世紀も前に生まれ、死んでいった人たちなのだから。引用:『エンディミオン』ダン・シモンズ著, 酒井昭伸翻訳(早川書房)







エンディミオン -解説-



































物語は〈聖牌〉というカトリックの惑星で生まれ育ち、聖職を授けられたばかりの若い司祭ルナール・ホイトが、惑星外ではじめての仕事を命ぜられるところから幕をあける。彼の役割とは、高名なポール・デュレ神父につきそい、その人知れぬ追放の見張りとして、開拓星ハイペリオンに赴くことだった。
P.50
引用:『ハイペリオン』ダン・シモンズ著, 酒井昭伸翻訳(早川書房)














ユリウス十四世聖下は、当然ながら六十代はじめだが、その在位期間は二百五十年間もの長きにわたり、ほぼ途切れることなく、ずっとつづいている。在位が中断するのは、死してのち復活に要する短い期間にかぎられており、これまでに教皇冠授与式がくりかえされることは八回を数えた。最初はユリウス六世として――在位八年だった反教皇テイヤール一世の退位後に――就任したのち、以後は生まれ変わるたびに、七世、八世と代を重ね、いまにいたる。
P.138
引用:『エンディミオン』ダン・シモンズ著, 酒井昭伸翻訳(早川書房)






ぼくの人生が永遠に変わってしまい、この物語が真の始まりを迎えたとき、ぼくは二十七歳で、ハイペリオン生まれにしては背が高く、両手の胼胝が厚いことと風変わりなものを好む点を除けば、とくに変わったところのない人間だった。当時のぼくは、トスチャハイ湾に面するポートロマンスから北へ百キロほどの湿原で狩猟ガイドを務めていた。
P.14
引用:『エンディミオン』ダン・シモンズ著, 酒井昭伸翻訳(早川書房)


一族の名前にこの惑星上の都市の名前をいただくのは、先行入植一族に見られる伝統だ。事実、ぼくの一族は生粋の先行入植者で、約七世紀前、最初の播種船で入植した者たちの後裔にあたる。だが、みずからの惑星にありながら、ぼくらはいまや三級市民の窮境にあった。パクス系外世界人たちが一級市民で、ぼくらの祖先が入植してから数世紀後にやってきた〈聖遷〉時入植者たちが二級市民、それにつぐ三級市民がぼくらというわけだ。〈聖遷〉から数世紀来、ぼくの一族はこのあたりの谷や山に住みついて仕事をしてきた。その間ずっと、一族はほぼ確実に、日のあたらない仕事についてきたのだろう――ぼくが八歳のとき若死にした父がそうだったように、その五年後に死んだ母がそうだったように、そして、つい今週までのぼくがそうだったように。
P.76























「よかろう」老人はいった。「話は二百四十数年前にさかのぼる。ときに〈崩壊〉の真っ最中じゃ。『詩篇』に登場する巡礼のひとりはわが友じゃった。名前をブローン・レイミアという。実在の人物じゃよ。〈崩壊〉ののち……連邦が息絶え、〈時間の墓標〉が開いたのち……ブローン・レイミアは娘を生んだ。娘の名はダイアナといったが、これが強情な子で、ことばをしゃべれる齢になると、自分で勝手に改名してしまいおってな。しばらくはシンシアと名乗っておったが、つぎはケイトと名乗り……ヘケイトを縮めたんじゃ……十一歳になったときは友人にも家族にも、アーテミスの略でテミスと呼ぶように要求した。以上を古代ギリシア風に読めば、ディアーネ、キュンティアー、ヘカテー、アルテミスといずれも月の女神にかかわる名前ばかりじゃ。もっとも、最後に会ったときは、アイネイアーと名乗っておったが」
老人はことばを切り、目をすがめてぼくを見た。
「どうでもいいことと思うかもしらんが、名前というものはだいじだぞ。この都市にちなんだ名前の持ち主でなければ――この都市の名前自体、大むかしの詩にちなんでつけられたものじゃが――わしの注意を引くこともなく、今日ここにこうしていることもなく、おまえさん、いまごろは死んでおったじゃろう。〈中つ海〉で腐食虫の餌になってな。わかるかや、ロール・エンディミオン」P.48-49





「汝は魅せられざる静謐の花嫁/汝は沈黙とスロータイムの養い子を宿す……」
キーツはブローンの顔に視線を移した。
「〈後に来る者〉の母たるもの、そのくらいの特権はあってもいい」――中略――
「彼女がなにを教えるのかはわからないが、その教えは宇宙を変革し、今後一万年にわたって必要不可欠となる、いろいろな考えを実現させる」
P.557
引用:『ハイペリオンの没落 下巻』ダン・シモンズ著, 酒井昭伸翻訳(早川書房)































































批評を終えて











いつもより少しだけ自信を持って『エンディミオン』の読書案内をしている書生。彼のポケットには「読書エフスキーより」と書かれたカセットテープが入っていたのでした。果たして文豪型レビューロボ読書エフスキー3世は本当にいたのか。そもそも未来のロボが、なぜカセットテープというレトロなものを…。


名言や気に入った表現の引用


言うべきことが見えないうちは、自分が考えていることもわかるはずはない
P.8
人生では往々にしてそうであるように、なんらかの行為をするにあたって、動機はたいして重要ではない。残るのは行為という事実のみだ。結局のところ重要なのは、ぼくがこれを書き、あなたが読んでいるという動かしがたい事実だけでしかない。
P.11
すべての答えは、待つ者のもとを訪れるもの。
P.44
小さな子供というものは、何百とある惑星のどこであっても、お絵かきで家を描くときは、まず四角を描き、その上に三角を載せ、長四角の煙突から煙が立ち昇る絵を描くという。
P.82
何十億人だろうと、それぞれが好きにやればいい。ぼくにとってだいじなのは、自分の人生です。自分の人生は……自分のものとして送りたい
P.122
世の中、簡単にいくことなどはありえない
P.188
認めるが、このときぼくは愕然とした。その驚きは顔に表れたにちがいない。その朝ポーカーをやっていなかったのは幸いだった。
P.251
「チョコレートを」ぼくはいった。「そうだな。やっぱり、チョコレートにかぎるよ」
P.281
ごぞんじだろうか、旅でひときわ印象に残るのは――どんな長い旅であっても――最初の一週間かそこらだということを。
P.295
きっとうまくいくよ、なにもかも
P.311
偉大なる神のしろしめすこのくそったれの宇宙では、事故や不測の事態を回避することなんぞできんのです。だれにもね
P.321
情報はね、どんなときでも宝物だよ、ロール。人間が宇宙を理解しようとするときには、愛と誠実さのつぎにだいじなのが情報なんだ
P.367
「賭けるったって、持ちあわせなんかないだろう?」
アイネイアーの笑みが大きくなった。
「じゃあ、負けなければいいのよ。そうでしょ?」P.380
校閲屋どもはいつの世も無能でろくでなしばっかりだ、千四百年のむかしでもそれは変わらん
P.450
「なぜです?」宇宙船はきいた。「下流へくだる目的とはなんの関係ないものを、なぜ調査したりするのです?」
アイネイアーが身を乗りだし、ぼくの手首をつかんで自分の顔に近づけた。
「それはね――人間だからよ」PP.463-464
ぼくはかぶりをふり、木を伐りに森へ歩みよった。ひとりで黙々と木を伐る作業には、頭を冷やす効果があった。
P.499
あの手のもののヒーローは、スキマー、EMV、ソプター、コプター、固定翼機、宇宙船と、盗んでいくどんな乗り物でも動かしかたを知っている。ぼくにヒーローの基礎訓練が欠けていることはまちがいなかった。
P.48(下巻)
婆さまはよく、オールドアース初期の科学者で、チャールズ・ダーウィンという人物の話をしてくれた。たしか、進化論だか重力理論だかの原型の創始者で、聖十字架という褒賞すらない時代にありながら敬虔なキリスト教徒として育てられたものの、大型種のクモがジガバチによって痺れさせられ、卵を生みつけられ、回復したのちは抱卵を肩代わりさせられたあげく、孵ったハチの幼虫に生きた腹を喰い破られるのを見て、無神論者に転向したという人物だ。
P.130(下巻)
「チーズがあれば、ハムとチーズのサンドイッチを作ることもできたろうさ」デ・ソヤ神父大佐は答えた。「ハムさえあればな」
P.175(下巻)
苦痛と絶望という砂漠のただなかで、冷静さというオアシスを見つけられた裏には、もうひとつの理由があった。ぬくもりだ。
P.243(下巻)
真の暴力的行為がみなそうであるように、それは一瞬のできごとだった。
P.288(下巻)
ぼくは改めて認識した――勇敢であるためには、なにも知らないままでいるのがいちばんだということを。
P.291(下巻)
進化とは、未完の過程ではあるが、ひとつの方向性を持った過程である
P.318(下巻)
ヒトは進化を通じて生まれた。そしてそのヒトこそが、長く苦しみに満ちた過程を経て、人間性を生みだしたんだ
P.321(下巻)
友人、食べもの、会話があるところには、罰も苦痛もない
P.324(下巻)
愛が答えなら、設問はなんだ?
P.336(下巻)
ギリシア人は重力の働きを知っていたけれど、それを四大のひとつが――地が――“身内のもとへ急いでもどるため”と説明したわ。
P.338(下巻)
ふたり以上の人間が共有する秘密は、いつまでも秘密ではいられないことを知っているからだ。
P.399(下巻)
いやになるな。技術が進めば進むほど、なんでもシンプルになるはずなのに。
P.506(下巻)
天才というのはね、ヘマをするものなのよ、ロール。
P.514(下巻)
人生とは残酷だわ。かけがえのない瞬間がささいなことで失われてしまうんだもの。
P.526(下巻)

エンディミオンを読みながら浮かんだ作品


レビューまとめ

ども。読書エフスキー3世の中の人、野口明人です。
レビュー本編の方で忘れていましたが、『エンディミオン』は一応『ハイペリオン』からは独立して読める物語になってはいますが、やはり『ハイペリオン』と『ハイペリオンの没落』を読んでから読んだ方が良い作品です。
長門有希の100冊に入っているからと、『エンディミオン』から読もうとすると、話についていけなくなります。
まぁ、あんまりそんな読み方をする人はいないとは思うんですけどね、実際に僕は長門有希の100冊に入っている物をレビューしていこうと『ギリシャ棺の謎』の後に『エンディミオン』を手に取ったのですが、意味がわからなくて『ハイペリオン』を読み始めた人間なのです。
そうなると自然と『ハイペリオン』や『ハイペリオンの没落』と比較したくなりますが、2つの作品が枠物語、群像劇と特殊な書き方をしていたのに比べて、『エンディミオン』はまっすぐストレートな書き方をしているので物足らなさを感じるかもしれません。
それほど謎はありませんし、最後のどんでん返しもありません。
だけど、今まで以上に王道冒険感がすごい!
僕のような今まであまりSFに触れてこなかったライトユーザーからすると、非常に読みやすいしわかりやすいドキドキ・ワクワクなSF小説になっています。
そもそも前に敵だったやつが仲間になっていくのって熱くないですか!?
ドラゴンボールのベジータしかり、NARUTOの我愛羅しかり、かつての究極のライバルが仲間になって、更に強大な敵に立ち向かっていく感じ。
『エンディミオン』の魅力はまさにそこです。
主人公ロール・エンディミオンと神父デ・ソヤの2つの視点で描かれていき、ただの追走劇かと思いきや…。
しかも、今回は最強の殺戮の神、シュライクまでも仲間になるのです!
な、なんで!?
って最初は思いましたが、読んでいるうちに「早くシュライク来てくれ!」ってなっていました。
なぜ長門有希の100冊に『ハイペリオン』ではなく『エンディミオン』を選んだのかについては、勝手な推測ですが、ある意味『涼宮ハルヒの憂鬱』では長門有希はシュライクなんですよね。
情報統合思念体(宇宙人)によって作られた対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェースというのが長門有希の正体なので、シュライクの境遇とかぶると思うのです。
困った時の長門有希って展開も、デウス・エクス・マキナのシュライクっぽいですし。
そんなシュライクが味方のように描かれている所に、長門有希は憧れを抱いたんじゃないかと思うのです。
ま、推測の域は出ないんですがね。
SF愛好家だったらちょっと凝った書き方をしている『ハイペリオン』とかの方が好きそうで、読書好きの長門有希もそっちに属すかなと思うんですが、それでもこの『エンディミオン』を推す所に、長門有希の仲間想いの感情を読み取りました。
ではでは、そんな感じで、『エンディミオン』でした。次回は、ついにハイペリオンシリーズの最後。『エンディミオンの覚醒』を扱いたいと思います。
ここまでページを閉じずに読んで頂いて本当にありがとうございました!
面白かった!と思ったあなたはブックマークをお願いします!そして良かったら別の記事も読んでいただけると嬉しいです。
最後にこの本の点数は…
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エンディミオン - 感想・書評
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エンディミオン
- 読みやすさ - 98%98%
- 為になる - 65%65%
- 何度も読みたい - 91%91%
- 面白さ - 97%97%
- 心揺さぶる - 92%92%
読書感想文
すごすぎるSFの世界観なのに、空飛ぶじゅうたんのようなレトロなSFをマッチさせるダン・シモンズの手腕が光る。4作品の中で一番冒険色が強く、ワクワク・ドキドキが止まりません。次々と立ちはだかる困難に3人はどう挑んでいくのか?「逆アイル・ビー・バック!」なラストは、まさに胸熱です!…ま、とりあえず熱いんだ。色んな意味で。