『三つの棺』の犯人に驚かされる!密室の講義も含めておすすめ!

三つの棺 - 書籍情報
  • 著者:ジョン・ディクスン・カー
  • 翻訳者:加賀山卓朗
  • 出版社:早川書房
  • 作品刊行日:1935年
  • 出版年月日:2014年07月10日
  • ページ数:415
  • ISBN-10:415070371X

BOOK REVIEWS

三つの棺というジョン・ディクスン・カーの推理小説は、長門有希の100冊に登録されているので、いつかは読んでやろうと大学生の時から探している本なのですが、絶版状態が続き長いこと手に入らなかったのです。

しかし、最近になって調べてみると2014年に新訳が出ているではありませんか。ジョン・ディクスン・カーはミステリー小説の大御所でありながら、発売当初から翻訳に恵まれず、江戸川乱歩や横溝正史などから叩かれ、日本ではすぐに絶版になってしまうという悲しき作家でしたので、なんとありがたい事!

ついに手に入れたその『三つの棺』という作品はミステリー業界では「密室の講義」という章が非常に有名なのです。大絶賛の嵐である「密室の講義」とは、どんなもんかいの?と読み進めてみると…。

ぐはぁーーーっ!!(;´Д`)

…ということで、前置きはこのぐらいにして、どのように「ぐはぁーーーっ!!」だったのか、早速『三つの棺』のレビューをしていくことにしましょう。

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小説『三つの棺』 – ジョン・ディクスン・カー・あらすじ

三つの棺
3.6

著者:ジョン・ディクスン・カー
翻訳:加賀山卓朗
出版:早川書房
ページ数:415

雪の降り積もる夜、グリモー教授のもとにコートと帽子で身を包み、仮面を付けた謎の男が来客した。突然鳴り響く銃声の音。書斎ではグリモー教授が胸を撃たれて倒れていた。しかし、来客したはずの仮面の男はどこを探しても見つからぬ。雪道に足跡も残さず、文字通り消えてしまったのだ…。

読書エフスキー3世 -三つの棺篇-

文豪型レビューロボ読書エフスキー3世-三つの棺
前回までの読書エフスキーは

あらすじ
書生は困っていた。「自分の意見が言いたいからって、さらりとネタバレするやつ!」と仕事中に寝言を言ったせいで、独り、無料読書案内所の管理を任されてしまったのだ。すべての本を読むには彼の人生はあまりに短すぎた。『三つの棺』のおすすめや解説をお願いされ、あたふたする書生。そんな彼の元に22世紀からやってきたという文豪型レビューロボ・読書エフスキー3世が現れたのだが…

三つの棺 -内容紹介-

無料読書案内の書生
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大変です!先生!ジョン・ディクスン・カーの『三つの棺』の事を聞かれてしまいました!『三つの棺』とは一言で表すとどのような本なのでしょうか?
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
“推理小説を楽しむための心構えを教えてくれる小説”デスナ。
無料読書案内の書生
無料読書案内の書生
と、言いますと?正直な所『三つの棺』は面白い本なのでしょうか?

 グリモー教授の殺害と、その後カリオストロ通りで起きた同じくらい信じがたい犯罪に対しては、奇怪なことばをいくらでも当てはめることができる。無理もない。不可能状況に目がないフェル博士の友人たちも、彼の事件簿にこれ以上不可解で怖ろしい謎は見つけられないだろう。すなわち、二件の殺人が起きたが、犯人は見えないだけでなく、空気より軽かったとしか思えないのだ。証拠によると、この者は最初の被害者を殺し、文字どおり消えてしまった。また別の証拠によると、彼はふたりめの犠牲者を空っぽの通りのまんなかで殺したが、通りの両端にいた人々はその姿を見ておらず、雪には足跡も残っていなかった。

引用:『三つの棺』ジョン・ディクスン・カー著, 加賀山卓朗翻訳(早川書房)

読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
コンナ一文カラ始マル“ジョン・ディクスン・カー”ノ1935年の作品デス。読メバワカリマス。
無料読書案内の書生
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えーっと、それでは困るのです。読もうかどうか迷っているみたいですので。ちょっとだけでも先生なりのご意見を聞かせていただきたいのですが。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
読む前にレビューを読むと変な先入観が生マレテシマイマスノデ…
無料読書案内の書生
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ええい、まどろっこしい!先生、失礼!(ポチッと)
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
ゴゴゴゴゴ…悪霊モードニ切リ替ワリマス!
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うぉおおお!先生の読書記録が頭に入ってくるぅぅー!!
三つの棺_批評

三つの棺 -解説-

読書エフスキー3世
読書エフスキー
今回はジョン・ディクスン・カーの『三つの棺』です。
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書生
あれ?なんかこのサイトで前に『三つの棺』って取り扱いませんでしたっけ?
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
あー、確か『屍人荘の殺人』で話に出しましたね。
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書生
ですよね。なんか“密室の講義”が有名だとかなんとか。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
そうです。大雑把に言えば「推理小説は、ありえない設定だろうが、面白かったら良いじゃろうがい!」っていう内容のやつです。
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書生
ほほー。という事は、この作品はそういう系のトリックを使っているんですか?
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
ところがですね、これがそうでもないんですよ。
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書生
先生がさっき、冒頭の部分を紹介していましたが、「不可解で怖ろしい謎」とか「犯人は見えないだけでなく、空気より軽かった」とか書いてありませんでした?
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
まー、導入はそうでしたね。殺人が起きたのですが、犯人を見た人はいないし、雪が降っていたにも関わらず、足跡も残っていない。文字通り、犯人は消えてしまったと。
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書生
それこそ「ありえない」話じゃないですか。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
もしそうだとしてですね、ファンタジーのように空が飛べたとかなんでもありでは、推理小説として成り立ちません。でもこれはれっきとした推理小説なのです。
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書生
ではなぜ設定がありえなかろうが、面白かったら良いじゃん!みたいな「密室の講義」が挿入されているんですか?
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
うーん…。そうですね。この頃のジョン・ディクスン・カーは、複雑なプロットを考案していた時期だとWikipediaに書かれていましたが、私が読んだ限りでは、この小説はメタフィクションではなかったように思えます。
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書生
メタフィクション…。これも前にやった気がしますが、なんでしたっけ?
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
あー、『幽霊たち』の時ですね。まぁ、フィクションをフィクションとして扱う事です。
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書生
…余計に頭がこんがらがってきたぞ。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
たとえば、今回の作品で言えば、「われわれは探偵小説の中にいる」と主人公の探偵が言っている場面があります。
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書生
あー、それがメタフィクションってやつですね。…ん?って事はメタフィクションじゃないですか。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
確かに、その部分だけを見ればそうかも知れませんが、例えばそこで語られている事が、実際に小説の中で起きた事件に関係したことなのかどうか?というと、それほど関係があるわけではありません。
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書生
と、言いますと?
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
はっきり言ってしまえば、その有名な「密室の講義」については、ごっそりカットされても、事件解決になんら関係はないのです。ジョン・ディクスン・カーは登場人物の姿を借りて、言いたかっただけなのかもしれませんね。自らハードルを上げて、それを飛び越えていくスタイル。
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書生
クリエイティブな仕事をしている人の苦悩の嘆きなんですかねぇ。そりゃーそうですよね。読者を喜ばせようと、今までなかったものを生み出そうと頑張っているのに、ありえない設定だなんだと難癖つけられたら、面白かったら良いだろうが!って叫びたくなりそうです。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
確かにそうかも知れませんね。複雑なプロットに挑戦していたジョン・ディクスン・カーですからね。
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書生
ところで『三つの棺』ってタイトルですが、これはどういう意味なんです?
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
それを説明するには、あらすじを知ってもらった方が早いかもしれませんね。殺されたのはシャルル・ヴェルネ・グリモー教授という教師であり、名高い講演者であり、作家でもある人です。
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書生
ほほう。グリモー教授が殺される、と。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
彼は肺を撃ち抜かれて自宅で殺されていました
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書生
肺を…。ぷええ。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
殺されたその日、彼の部屋には一人の訪問者がいました。
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書生
じゃあ、そいつが犯人じゃないですか。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
その訪問者は仮面をつけており、顔を見たものはいません。しかも、銃声が聞こえて、偶然その場に居合わせた、この小説の主人公であるギデオン・フェル博士がすぐにその部屋に突入したにも関わらず、その場には犯人と思われた訪問者はおらず、しかも外を見てみても逃げた形跡はありません
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書生
あー、雪が降っていたのに、足跡が残っていなかったってやつですね。
読書エフスキー3世
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どこをどう探しても、犯人がその部屋から出た形跡がなく、こうして密室殺人が出来上がったわけです。
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書生
なんと。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
さらには、フェル博士が色々と調査してみると、殺される前、グリモー教授の周りでは奇妙な事が起きていた事がわかります。
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書生
ほほう。それは?
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
グリモー教授は数人の仲間と一緒に酒場で語り合う習慣があったのですが、ある日、そこで吸血鬼について語っていると、一人の男が店に入ってきました。そして「棺の中から抜け出す事ができる人間がいる。自分もその一人であり、弟はそれ以上の事ができる。近々、弟か私のどちらかが教授を訪問することになるが、どっちがいい?」的な事を言ってきたのです。
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書生
棺から抜け出す…。それはドラキュラって事ですかね。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
この作品は1935年に書かれていますが、当時は吸血鬼ブーム真っ只中で、『魔人ドラキュラ』という映画がやっていたり、舞台が上演されたりしていたらしいので、ジョン・ディクスン・カーも題材に選んだんでしょうね。
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書生
へー。あ、ちなみに調べてみたら、ドラキュラって吸血鬼って意味じゃなくて、竜の息子って意味らしいですね。吸血鬼って英語はヴァンパイアで、日本ではなぜかドラキュラ=吸血鬼って誤用されているみたいです。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
吸血鬼ドラキュラって小説がありましたからね。その登場キャラクターの名前が先行してしまったのでしょう。
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書生
ブラム・ストーカーの作品ですね!その本、持ってます!
読書エフスキー3世
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さて、話が少しそれましたが、その奇妙な言葉を発した人間は名刺を置いて去っていきました。そこにあった名前はピエール・フレイ。
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書生
ピエール・フレイ。じゃあ、そいつが訪問者であり、犯人じゃないですか。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
ですがね、そのピエール・フレイは、グリモー教授が殺された当日に、同じく殺されてしまったのですよ。
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書生
な、なんですと!?
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
これまた不思議な事件でして、ピエール・フレイが殺さた瞬間に立ち会った目撃者は3人。街灯に照らされてもいるし、身体を隠せる建物もそばにないのに、銃声が聞こえた時に見えたのは被害者のピエール・フレイだけであり、どこにも犯人の姿をみた人がいなかったのです。
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書生
またもや、犯人が消えてしまった。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
現場にはピエール・フレイが撃たれたであろう拳銃が落ちていまして、鑑識にまわしてみますと、ピエール・フレイとグリモー教授が撃たれた拳銃だとわかったのです。
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書生
ん!?それって、ピエール・フレイがグリモー教授を殺害後、道端で自殺したって事じゃないんですか?
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読書エフスキー3世
それがですね、ピエール・フレイは背中を撃たれていたんですよ。自殺するにしても、自分一人ではどうやってもそんな所は撃てない。
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書生
うーむ。あ!考えてみれば、最初にピエール・フレイが言っていたじゃないですか。俺には弟がいると。そして俺以上の事ができると。犯人はその弟じゃないですか!?
読書エフスキー3世
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一同もそう思って、捜査していくんですけどね…。まぁ、話のあらすじはこんな感じです。登場人物とかだいぶ端折りましたけど。
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書生
ぐぬぬ。なんとも不思議な事件ですね。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
ラストは「え!マジで!?」と驚く結末でした。賛否両論みたいですけどね、私は面白かったと思います。
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なんか、この作品って江戸川乱歩とか横溝正史とか、日本で有名なミステリー作家は酷評したって聞いたんですけど。
読書エフスキー3世
読書エフスキー3世
あー、それについてはですね、江戸川乱歩が評論集でこんな事を書いています。

 この評論集では「英米短編探偵小説吟味」と「探偵小説に描かれた犯罪動機」の二つが最も長文の記事である。これは数年前「宝石」に連載したものだが、その連載をはじめる少し前、私はカーの短編「魔棺殺人事件」の中の「密室講義」を初めて英文で読んで、甚だ興味深く感じ、若し探偵小説の全トリックについて、こういうものが書けたら面白いだろうという野望のようなものを持った。

引用:『江戸川乱歩全集 第27巻 続・幻影城』江戸川乱歩著(光文社)

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魔棺殺人事件?これが三つの棺って事ですよね。密室講義が入っているってことは。
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ええ。日本で初めて三つの棺が翻訳された時は『魔棺殺人事件』ってタイトルだったんですよ。
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あれ?でもこれおかしくないですか?酷評してないじゃないですか。
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そもそも、もっとおかしい所があるじゃないですか。
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え?おかしい所?
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三つの棺って何ページの作品ですか?
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えーっと、今回扱う文庫本では415ページってなってますね。
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それって一般的に短編小説になりますか?
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いや、長編小説に分類されると思いますよ。…って、あれ?『私はカーの短編「魔棺殺人事件」』って言ってますね!
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そうです。日本で1936年に初めて翻訳された『魔棺殺人事件』は抄訳しょうやくだったのです。
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つまり、部分的に抜き出して翻訳した作品って事ですよね。
読書エフスキー3世
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そうです。その抄訳をしたのが、伴大矩ばんだいんという方。彼について、江戸川乱歩はまた別の所でこんな事を書いています。

 クイーンの場合も私は記憶していないが、初訳の「オランダ靴」の訳者が伴大矩ばんだいくだから、おそらくこの人が発見して自から推薦したものであろう。伴大矩君は、別名露下弴つゆしただんと両方を使いわけて、飜訳工場式に拙速飜訳をやった人で、学生などに下訳させたものもあったのではないかと想像されるが、本人はアメリカに住んだことがあり、アメリカ語には通じていたようだし、ヴァン・ダインなどとも文通して、アメリカの事情にも詳しかったので、クイーンが評判になっていることも、いちはやく気づいたのであろうと推察する。伴大矩君はアメリカ在住時代にけがをしたのか、足が悪くて外出が不自由だったので、外部との折衝は主に奥さんがやっていた。私は後にこの人の訳本「エジプト十字架」に序文をたのまれて書いたことがあるので、いくらか交渉はあったが、本人には会っていないし、奥さんが私の家へ来られたことはあるが、私は何か差支があって会っていない。用件は手紙ですましたように記憶している。
 伴大矩君の飜訳が拙速の商業主義で信用できないという印象を受けたのは、カーの「魔棺殺人事件」の悪訳などもあるが、直接本人から手紙でそういう口吻を漏らされたことがあるからだ。「エジプト十字架」のあとで、何の飜訳だったか忘れたが、やはり序文がほしいというので、原稿だったかゲラ刷りだったかを送って来たことがある。読んで見るとどうも面白くないし、訳文も好ましくなかったので、失礼だけれども、これは私には面白くないから序文を書く気がしないという返事を出した。すると、伴大矩君から折返し手紙が来た。私は商業として飜訳をやっているものだから、そんな良心的なことをいわれても困るという文意であった。飜訳工場を自任していたのである。

引用:『江戸川乱歩全集 第28巻 探偵小説四十年 (上)』江戸川乱歩著(光文社)

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飜訳工場式に拙速飜訳。つまりは酷い翻訳でも、バンバン出しちまえば儲かる的な姿勢って事ですよね。
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ええ。なので残念な事にジョン・ディクスン・カーの『三つの棺』も伴大矩の“下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる”の弾にされてしまったわけですね。
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なんてこったい。
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ちなみに完訳が出たのはその約20年後である1955年なんですが、これまた悪訳と評判でしてね。1976年、2014年と訳者を変えて刊行されています

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随分と間が空いていますね。
読書エフスキー3世
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このジョン・ディクスン・カーという作家はミステリー黄金期の三大作家(エラリー・クイーン、アガサ・クリスティ、ジョン・ディクスン・カー)に名を連ねてはいるんですが、なぜか日本では賛否両論の激しい作家なんですよ。
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あれですかね、名前が“りきいち”って読めちゃうからですかね。
読書エフスキー3世
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ん?どういう事です?
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江戸川乱歩の引用を読んでいて思ったんですけど、ジョン・ディクスン・カーって「カー」って呼ばれているじゃないですか。それが日本人的には漢字で「りきいち」って読めちゃうっていう。
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…いやいや、読めちゃったとしても、賛否両論の激しさにはつながらないでしょう。
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ほら、あしたのジョーのライバルが死んじゃうのも賛否両論あったじゃないですか。
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君、それは「りきいち」やない、「りきいし」とおるや。
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おあとがよろしいようで。
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って、まだまだ終わってなーい!
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えー、もうあらすじも聞いたし、前に「密室の講義」の事もやったので、お腹いっぱいなんですよ。
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ぐぬぬ。まだまだジョン・ディクスン・カーについて語りたい事があったのに。
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それはほら、中の人に語ってもらうことにしましょうよ。
読書エフスキー3世
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なんか、君、今日は冷たくないですか?
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『三つの棺』のタイトルの意味も説明してくれてないし、犯人がどうやって姿を消したのかとか、犯人は誰なのかとか気になることばかりで、早く『三つの棺』を読みたいんですよ!
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あー、なるほど。犯人はあれですよ。ほら…
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おいーっ!!自分の意見が言いたいからって、さらりとネタバレするやつ!そういう人いるわ!…ネタバレされる前にポチっと!

批評を終えて

読書エフスキー
読書エフスキー
以上!白痴モードニ移行シマス!コード「イツモ・ココノ・ナマエノイミ!」
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「自分の意見が言いたいからって、さらりとネタバレするやつ!」…って、あれ?僕は一体何を…。
職場の同僚
職場の同僚
何をじゃないよ!仕事中に居眠りこいて!
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え?あれれ?読書エフスキー先生は?
上司
上司
誰だそれ。おいおい。寝ぼけ過ぎだぞ。罰として一人でここの案内やってもらうからな!
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えーっ!?一人で!?で、出来ないですよ〜!!
上司
上司
寝てしまったお前の罪を呪いなさい。それじゃよろしく!おつかれ〜
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ちょっ、ちょっと待って〜!!…あぁ。行ってしまった。どうしよう。どうかお客さんが来ませんように…。
お客さん
お客さん
…あのすいません、三つの棺について聞きたいんですが。
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(さ、早速お客さんだーっ!!ん?でも待てよ…)いらっしゃいませー!ジョン・ディクスン・カーの1935年の作品でございますね。おまかせくださいませ!
ブックレビューテープ
 あとがき


いつもより少しだけ自信を持って『三つの棺』の読書案内をしている書生。彼のポケットには「読書エフスキーより」と書かれたカセットテープが入っていたのでした。果たして文豪型レビューロボ読書エフスキー3世は本当にいたのか。そもそも未来のロボが、なぜカセットテープというレトロなものを…。
読書エフスキー
読書エフスキー
ウィンク。パチンパチン。
三つの棺レビューお終い

名言や気に入った表現の引用

三つの棺の名言
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「一杯の茶を飲めれば、世界なんか破滅したって、それでいいのさ。by フョードル・ドストエフスキー」という事で、僕の心を震えさせた『三つの棺』の言葉たちです。善悪は別として。

たいていいちばん心地よいときに、びっくり箱のように小さなことが飛び出して人をつつくものだ。

p.22

「頭がおかしいとされている人間が正気の人間を脅したところで、心配するかどうかは人それぞれだが」フェル博士はまたうなずいて言った。「正気の人間が、おかしくなったようにふるまいはじめたら、私は大いに心配するね。何もないかもしれん。だが、嫌な予感がするのだ」

p.28

悪意を抱いた人間はぐずぐずしない

p.64

われわれは、二十歳未満の人間にこれから感情が備わることはない、四十を超えた人間にかつて感情があったことはない、と考えるのが好きですからね。

p.74

煙のなかから人であれ、子鬼であれ、形を持ったものは現れない。

p.98

小説のなかでドアを打ち壊すのがどれほど簡単か考えたことがあります? ああいう小説は大工の楽園です。なかにいる人間が気軽な質問に答えないといったつまらないことで、次から次へとドアが叩き壊されるんですから。でも試しに一度やってみてください! やるだけ無駄です。

pp.115-116

いまのところ最高の説明ですよ、よりよい説明を思いつくまでは。それに、あれで彼らの頭はいっぱいになる。証人の頭はつねにいっぱいにしておくべきです。

p.128

正直に申し上げれば、あなたの脅しなどなんとも思いません。皿にのったポーチドエッグのように人の輪郭しか見えない人間を動揺させたり、怒らせたり、怖がらせたりできるものはごくわずかしかないのです。世の中のほとんどの恐怖は(野望もですが)、眼や身ぶりや外観といった、形あるものによって引き起こされます。

p.151

われわれは秒ではなく分で時間を考えるからね。

P.192

「おっほん。はっ。ルールを教えてあげよう。幽霊は悪であるべきだ。幽霊は話してはならない。透明ではなく、実体が必要だ。舞台の上に長くとどまってはならず、通りの角から顔を突き出すなど、短時間で鮮明な印象を残さなければならない。明るすぎるところに現れてもいけない。学問的またはキリスト教会的な古めかしい背景を持つべきだ。つまり、修道院とかラテン語の写本といった味わいだな。このごろ、古い図書館や古代の遺跡をあざ笑う不幸な風潮がある。本当に怖ろしい幽霊は、菓子屋やレモネードの屋台に現れると言ったりしてね。いわゆる“現代の試練”というやつだ。大いにけっこう。現実の生活の試練を与えたまえ。ところが、現実の生活を送る連中も、古代の遺跡や教会の墓地に心の底から震え上がったことがある。それは誰も否定しないだろう。現実の生活を送る誰かがレモネードの屋台で何かを見て(むろん飲み物ではない)悲鳴をあげるか気絶するまで、現代の理論はただのゴミと言うしかない」

P.198

こっちはあまり気にせず、どんどん説明する。するとそのあと質問されて、一言一句正確にくり返せないと、どうやら嘘をついていると思われる。申しわけありませんが、旦那、私はこれで精いっぱいです

P.235

ほとんどの人は、種明かしをされると心底がっかりするからです。まず、その種があまりに気が利いて単純だから――本当に笑えるほど単純なのです――そんなものに自分がだまされたと信じたくないんでしょうね。”なんてこった! 聞かなきゃよかった。ひと目でわかったはずなのに”というわけです。あるいは、協力者が必要なトリックという第二の可能性もある。すると人々はますますがっかりするのです。”だって、誰かが助けてくれるんだったら――!”という感想です。まるで、協力者がいればなんだってできるというふうに

P.237

人とはおかしなものです。奇術を見に出かけて、奇術をお見せしますと言われ、見るために入場料も払う。それなのに、何かおかしな理由から、それが魔法でないことを知らされると怒るのです。自分たちが調べた、鍵のかかった箱やロープで縛られた袋から誰かが抜け出した方法を聞くと、目くらましだったことに腹を立てる。だまされたのがわかると、ずるいごまかしだと言う。でもいいですか、そういう単純なトリックを考え出すのにはが必要なんです。脱出の達人になるには、冷静で、強靭で、経験豊富で、電光石火のようにすばやくないといけない。ですがみんな、目と鼻の先で人をだますのには知恵がいるってことを、考えてもみないんだ。脱出のトリックを、何か本物の魔法みたいな妖しいものにしたいんだと思いますね。

PP.237-238

人は見えないものを見ているか、そこにないものを見たと思いこんでいる。

P.241

私の経験で言えば、家のなかでもっとも注意が向かないのは、釘にかかったコートだ。

P.281

われわれは探偵小説のなかにいるからだ。そうでないふりをして読者をたぶらかしたりはしない。探偵小説の議論に引きこむために念入りな言いわけなど、考えるのはよそう。隠し立てせず、もっとも高貴な態度で本の登場人物であることに徹しようではないか。

P.289

いずれにせよ、探偵小説において、”ありそうもない”がとうてい批判にならないことは指摘してよかろう。われわれは、ありそうもないことが好きだからこそ、探偵小説に愛着を抱くと言ってもいいのだからね。Aが殺され、BとCに強い嫌疑がかかっているときに、潔白に見えるDが犯人ということは、ありそうもない。ところが、Dが犯人なのだ。Gに鉄壁のアリバイがあり、あらゆる点で、残るすべてのアルファベットから潔白だと太鼓判を押されているときに、Gが犯罪を起こしたというのは、ありそうもない。だが、Gが起こしたのだ。探偵が海岸でわずかな炭塵を見つけたとしても、そんなつまらないものが重要な意味を持つことは、ありそうもない。だが、持つのだよ。要するに、”ありそうもない”という単語が、もう野次として意味を持たない域に達するのだ。小説の最後まで”ありそうかどうか”は忘れられる。殺人を予想外の人物に結びつけたければ(われわれ時代遅れの老人のいくらかは、そうしたがるが)、その人物、最初に疑われる人物より、ありそうもない、必然的にわかりにくい動機で行動しても、文句は言えない。
 心のなかで、”こんなことはありえない!”と叫んだり、顔を半分見せた悪霊や、頭巾をかぶった幽霊や、人を惑わす金髪のセイレーンに不満をもらしたりしているときには、たんに”こういう話は好きではない”と言っているにすぎないのだ。むろんそれでかまわない。好きでないなら、そう言う権利はいくらでもある。しかし、こういう趣味の問題を強引にルールに変えて、小説の価値や蓋然性を判断するのに使いはじめると、結局たんに”この一連の事件は起きるわけがない。起きたとしても私が愉しめないから”と言っていることになる。

PP.290-291

なぜわれわれは密室の説明を聞いて疑わしいと思うのか。もとより懐疑的だからではなく、理由はたんに、なんとなくからだ。その感覚からごく自然に不公平な一歩を踏み出し、事件全体を信じがたいとか、不可能だとか、どう見ても馬鹿げていると断じてしまう。

PP.291-292

眼のまえで奇術が披露され、奇術師が見事にそれをやってのけること自体が、だましの印象をいっそう悪くするようだ。それが探偵小説のなかで起きると、われわれは信じがたいと評価する。現実の世界で起きると、仕方なく認めるが、腹いせに種明かしでがっかりしたと言う。両方のがっかりの裏にあるものは同じだ――われわれは期待しすぎるのだよ。

P.292

結果が魔法のようだと、原因も魔法のようなものだという期待が高まる。それが魔法でなかったことがわかると、くだらないと一蹴する。これはどう見ても公平ではないね。殺人者の一貫性のない行動については、決して文句を言ってはならない。全体の判断基準は、そうすることが可能かどうかだ。可能であるのなら、そうするかどうかは問うてはならない。男が鍵のかかった部屋から逃げ出す――それで? そもそもわれわれを愉しませるために自然の法則に反したのだから、”ありそうもない行動”の法則を踏みにじる資格があるのは当たりまえだ!

PP.292-293

「また罪を犯してしまったよ、ハドリー」博士は言った。「また真実を見抜いてしまった」

P.395

読書エフスキー3世
読書エフスキー
引用:『三つの棺』ジョン・ディクスン・カー著, 加賀山卓朗翻訳(早川書房)

三つの棺を読みながら浮かんだ作品

しあわせの書: 迷探偵ヨギガンジーの心霊術
4.2

著者:泡坂妻夫
出版:新潮社
ページ数:241

読書エフスキー3世
読書エフスキー
おや?泡坂妻夫の『しあわせの書―迷探偵ヨギガンジーの心霊術』ですか。
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これは昔、ブログのコメントで教えてもらった本で、文庫が1ページ1ページ袋とじされているんですよ。まずはそれを開かずに読んで、そしてすべてを読み終わった後に袋とじを開いて読む。すると種明かしが行われるという、マジシャンもしている泡坂妻夫ならではミステリー小説でした。三つの棺にもマジシャンが出てきますが、それでこの本を思い出しましたのでご紹介。

レビューまとめ

三つの棺まとめ

ども。読書エフスキー3世の中の人、野口明人です。

読書スピードとこのブログの記事を書くスピードが全く違うので、レビューネタだけどんどん増えていきます。

今回の『三つの棺』も実はもう2ヶ月ほど前に読んだ本でして、『屍人荘の殺人』のレビューの時に引用したのも、ちょうどそれを読み終わった頃でして、いたく感銘を受けたからなんですよね。

まず、この小説の主人公、ギデオン・フェル博士。どうやらシリーズ物らしくて、数々のジョン・ディクスン・カー作品に登場します。

シリーズ物の名探偵と言えば、色々なキャラクターが思い浮かぶじゃないですか。

海外ならコロンボやら、シャーロック・ホームズ、日本なら、金田一耕助やら明知小五郎、漫画でも工藤新一とか色々といますよね。

彼らに共通する点はなんだと思いますか?

まぁ、色々と答えはあるのでしょうが、僕のイメージで話させてもらいますと、彼らはみな、シュッとしてるんです。

何が?

体型が。

ところがギデオン・フェル博士は、デブなんです。ちょっと階段登っただけで息がゼイゼイ言い出す巨体なのです!

まず僕はそれで度肝を抜かれました。なんとこの探偵、デブかっこいいんです。これが第一の「ぐはぁーーーっ!!」です。

かっこいい探偵がスマートに事件を解決していく。それが今までの名探偵もののテンプレートだとしたら、ギデオン・フェル博士はそのテンプレートをぶち壊していきます。

デブがキレッキレに事件を解決していく。そのギャップがたまりません

しかもこのデブが途中で、僕らは今、小説の中にいるなんていう、約束破りな事を言い出すものだから、第二の「ぐはぁーーーっ!!」到来。

もちろんそれはかの有名な「密室の講義」の導入なのですが、これがまた面白い。

数々のミステリー小説を取り上げ、そのネタバラシなどをしていくので、まさに今それらの作品を読もうとする人は要注意ですが、過去に読んだ事がある人はきっとニヤニヤする内容ですし、これきっかけでそれらの作品を読んでみようと思う人も多いハズ。

そして第三の「ぐはぁーーーっ!!」はこの事件の真相です。

数多くの登場人物が登場し、みながみな怪しい感じで話が進んでいくので、最後の種明かしの部分を読んで、まじかよ!こいつが犯人かよ!と度肝を抜かれました。

まぁ、僕が推理小説を読んでいる量が少ないから犯人がわからなかったのかもしれないですけどね。トリックについては賛否両論あるみたいですが、僕はそのトリックも含めて、犯人に驚いて、楽しめたので良しとしましょう。

ちなみに、翻訳に恵まれないジョン・ディクスン・カーという話をしましたが、このジョン・ディクスン・カーは実に速筆の作家でして、出版社と契約している本数を遥かに超える作品を生み出してしまったために、別のペンネームを使って出版するという経験もあるみたいです。

そう考えると、飜訳工場式に訳していた伴大矩の気持ちもわからないでもないような…。

まぁ、僕らは江戸川乱歩が苦言を呈していた昔に比べると、はるかに素晴らしい翻訳で読める機会に恵まれているわけで、なんという幸せ者!

今回の翻訳も、昔の翻訳よりも文学性が薄れたという声もあるみたいですが、いつかは原文で読めるようになりたいと思う僕でした。

ではでは、そんな感じで、『三つの棺』でした。

ここまでページを閉じずに読んで頂いて本当にありがとうございます

面白かった!と思ったあなたはチャンネル登録をお願いします!…とYouTuberよろしく言いたい所ですが、これはブログなので、チャンネル登録がないのが残念な所。良かったら別の記事も読んでいただけると嬉しいです。

あ、YouTubeと言えば、お笑い芸人しずるの公式チャンネルにある「遭難」というコントがまさに「密室の講義」のギデオン・フェル博士ですので、興味があればぜひ。

最後にこの本の点数は…

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三つの棺 - 感想・書評

三つの棺
3.6

著者:ジョン・ディクスン・カー
翻訳:加賀山卓朗
出版:早川書房
ページ数:415

三つの棺
  • 読みやすさ - 83%
    83%
  • 為になる - 89%
    89%
  • 何度も読みたい - 81%
    81%
  • 面白さ - 88%
    88%
  • 心揺さぶる - 84%
    84%
85%

読書感想文

最近の新訳という事で昔の作品ではありますが、非常に読みやすい作品です。ただその為に、ドラキュラ関連を扱った物にも関わらず、おどろおどろしい雰囲気はあまり感じられませんでした。ラストのトリックは賛否両論ありますが、個人的には犯人は誰かな?と考えながら読むのが非常に楽しくラストには驚かされました。密室の講義も含めて、ぜひ人に勧めたい作品。

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