- 著者:恩田陸
- 出版社:新潮社
- 作品刊行日:1994/04
- 出版年月日:1999/02/01
- ページ数:341
- ISBN-10:4101234124
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球形の季節は恩田陸の2作目の作品。僕はこの二作目の作品というのを読むのが大好きです。…というのも、デビュー作は何かしらの確証を持ってデビューするわけで、高評価を得やすいですが、次の作品となるとどうしてもデビュー作と比較されやすい。
同じような作品を連発した方がいいのか、それとも全く別の物を創り上げた方がいいのか。その作家の苦悩が一番わかりやすいのが二番目の作品だと思うからです。
差別化するために様々な工夫してるなぁ〜、ここは前作にも見えた雰囲気だからこれがこの作家の個性なんだなぁ〜と考えながら読むのが、もうたまりません。んで、僕のクセとして気に入った作家を見つけるととにかく発表順で全作品を読んでみたくなる。
ということで今回は『球形の季節』を手に取ったわけです。
そんなわけで食わず嫌いの作家だった恩田陸の前作『六番目の小夜子』に驚かされた僕は、『球形の季節』が同じ学園モノという情報の元、同じような作品を連発する方を選んできたかー!と、格別に楽しみにして読み始めたわけですが、僕の予想は裏切られることになるのです…。
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小説『球形の季節』 – 恩田陸・あらすじ
読書エフスキー3世 -球形の季節篇-

あらすじ
書生は困っていた。「このロボ、頭がファンタジー!」と仕事中に寝言を言ったせいで、独り、無料読書案内所の管理を任されてしまったのだ。すべての本を読むには彼の人生はあまりに短すぎた。読んでいない本のおすすめや解説をお願いされ、あたふたする書生。そんな彼の元に22世紀からやってきたという文豪型レビューロボ・読書エフスキー3世が現れたのだが…
球形の季節 -内容紹介-



坂井みのりがその奇妙な噂を聞いたのは、五月一日の水曜日の朝のことだった。
引用:『球形の季節』恩田陸著(新潮社)







球形の季節 -解説-







































五月十七日、一高生のエンドウという人が宇宙人に何かされる。

























































批評を終えて











いつもより少しだけ自信を持って『球形の季節』の読書案内をしている書生。彼のポケットには「読書エフスキーより」と書かれたカセットテープが入っていたのでした。果たして文豪型レビューロボ読書エフスキー3世は本当にいたのか。そもそも未来のロボが、なぜカセットテープというレトロなものを…。そしてダイの大冒険の話題を…。


名言や気に入った表現の引用


浮わついた華やかさとともに、春はどことなく大きな不安をも運んでくる。
この不安はかつて味わったことがある、とみのりは記憶をたどった。そうだ、初めて、自分以外の人間も皆、自分と同じようにモノを考え、自分と同じようにあらゆる感情を持ち、しかもそれぞれが自分と同じように自分以外の人の考えていることが理解できないのだ、と悟った時のことだ。
雪印の赤と白の缶に入ったコンデンス・ミルクが大好物だった。初めて舐めたときに、世の中にこんなうまいものがあるのかとショックを受けたほどである。缶のふたにプチ、プチと三角形の小さな穴を二つ開け(この、穴を二つ開けないと中身が出てこないというところに彼は限りなく神秘を感じた)、じっと息を止めてそこから小皿にとろとろと甘美な曲線を描いてミルクが流れこむのをうっとりとながめ、それをスプーンですくってゆっくりと舐めるのが至上の悦びであった。
薄紫色の割烹着を着た、少し猫背の、チリチリパーマをかけた小肥りのおばさんはいったい何人町の中を歩いているのだろう? 青いジャージをはき、黒に近い緑色のポロシャツを着て、口をあけて歩いているおじさんは? 我々はおそらく走り過ぎる国道沿いの町ごとに彼らを見ることができる。彼らはどこにでもいるし、ひょっとすると皆同じ人間なのかもしれない。
彼はきれい好きだから洗濯も掃除も大好きだ。自分の髪しか洗ったことのないその辺の女の子よりはよほど生活能力に優れている。
人が文字を書いているところというのは、なぜか魅力を感じるものだ。人が手元に集中して文章を書いていると一瞬無防備になり、ちらりと思いがけないものを見せるような気がする。
自分が他の子と違ってるのはもう解ってるね? 別に悪いことじゃないんだよ、茄子が自分は西瓜じゃないって気がついたからってなんの咎があるってんだね?
「家庭」というのも出口のない、丸い水晶玉だ。中にスッポリ吸い込まれると、二度と出ることができない。しかももっと恐ろしいのは、その中にいるときっと自分は幸福だと思ってしまうだろうということだった。弘範は、家庭というものが自分の秩序の一部になる分には構わないが、自分が家庭という秩序の一部になるのには耐えられそうもなかった。
噂がどうして流行るか考えたことある? それはね、みんなが願ってるからなんだよね。言葉には魂がこもってますからね、例えじゃなくて。セールスマンとかさ、塾とかでもさ、みんな毎日目標を口に出すじゃない? いくらいくら達成するぞー、とかどこどこに合格してみせるぞー、とか、応援とかしてても相手を倒せー、とか叫ぶわけじゃない、それが真実になるように。それが自分のものになるようい。たくさんの人間が噂をすればさ、それは大勢で繰り返し呪文を唱えてるようなものだろ? それはだんだん“真実”に、“本当”になっていくのさ。
テレビの中のきれいなスーツを着たキャスターたちは、「これでいいのでしょうか」「私達は今考えるべき時が来ているのではないでしょうか」といつも同じセリフで報告を終え、「恵まれていることを恥じよ」と叫んでいるように見える。反対に周囲の大人たちは、知らないで済めばそれにこしたことはないから、とあらゆる真実をひた隠しにしているように見える。まだいいのよ。いいの、あんたは考えなくて。一体どうしろっていうのよ、と時々みのりは無性に腹が立つ時がある。
きっといつか、ある日突然、「厳しい現実」や「耐え難い真実」というのが空から降ってくるにちがいない。あれだけ大人たちがひた隠しにするのだから、それはどんなに恐ろしいものなのだろう?
裕美は宗教そのものに関心はあったものの、実際に宗教を信じている人というのがどうも理解できなかった。自分と同じように人とは少々違った感覚を持ち、人とは違うものを見ているはずの静が、そういった、人間が人口的に作り出した思想体系を信じているのが裕美には奇妙に思えたのである。
宗教なんて未完成だし、矛盾だらけなのは承知してるわ。でも、ろくな答えのないこの世の中では、比較的きれいな答えの一つだと思うわ
きっと、こういう奴が戦争に行って、たくさんたくさん喜んで人を殺したんだ。命令だ、国のためだと言って楽しんで殺しまくったにちがいない。そういう幸運な奴が戦争中にはいっぱいいたんだ。こいつは今もの凄く不幸なんだ。こんなつまらない、こんな平和な時代に生き、合法的に人を殺す機会のない自分を憐れんでいる。やり場のないエネルギーに毎日絶望しているーー
優しい人間、誰にでも親切な人間なんて信じない。自分がそうしたいと思う者にだけ、無償の愛情を注げる者の方がよっぽど正しい。彼女は、目の前で忠彦たちと一緒に無邪気な顔でメロンをパクつく少年に、感動のようなものを覚えた。
まるで誰かが噂しているのを聞いていて、その人物がまた噂を本当にしてしまうのではないかと恐れているかのように、皆後ろを気にしながら喋っているようだった。しかし、一方で生徒たちは興奮していた。自分たちが噂することで、何かに参加しているような気持ちに、何かを期待する少し残酷な気持ちにみんながなっているようだった。
梅雨明けは遅く、相変わらずポトリと黒い絵の具を落とした水彩画のようなどんよりした雲が広がり、かすかににじむオレンジ色が夕暮れの時間であることを示してした。
このゼツボウテキな風景を守るためなのかな? 年寄りしかいない田んぼ、その田んぼに流れ込む工場廃水、野放しの色彩にあゆれたのっぺらぼうの町、いつも口を開け生き方も話し方も醜い若い女、去勢されたような坊主頭の中学生、他人が自分よりもいい生活をしていないか疑っている主婦、やりたくない仕事で擦り切れたサラリーマン、スナック菓子とファーストフードでブクブク太った子供。こんなものを守るために僕たちは戦場にやられるのかな?
人間というのは忘れやすいものだ。ついこのあいだまでセーターを重ねて着ていたこと、隙間風の冷たさにぶつぶつ文句を言っていたこと、ようやく半袖の服に腕を通したこと、制服のシャツが乾かず母親が愚痴をこぼしていたことなどを、この青空の前にはきれいさっぱり忘れてしまっている。こうして懲りもせず、春だ梅雨だ夏だと毎回新鮮に大騒ぎできる、忘れるということはなんとも素晴らしいことだ。
自由にしてやったんだから、さあ決めてみろ。やりたいことがいっぱいあるんだろ? 勉強なんか大嫌いなんだろう? じゃあとっとと始めたらどうだい、自分の人生とやらを。何を犠牲にして、何をして食べていくのか、どういう人間になりたいのか、右を歩くか左を歩くか。さあさあ、早く始めたらどうなんだい? 何かを決められる人というのは、よほど恵まれている人かよほど選択肢がないかのどちらかだ。けれど、世の中はそのどちらでもない人が圧倒的多数を占めている。
あたしは帰らなくては。あの、光あふれる退屈で懐かしい町に。
みんな何も考えてないし、何も感じてない。そのくせ傷つけられることだけにはえらく敏感でさ。日本人に生まれたっていうのも間違いだったかもな。人と違ったことをするのは恥ずかしいことだとちっちゃい頃から呪文のように教えこまれる。何か思いついたことをしようとすると、寄ってたかって押し倒され踏みつぶされる。俺は、あの義務教育とやらを九年かかって……九年もだぜ! ようやく終わった時には本当にホッとしたよ、ああなんて無駄な時間だったんだろうって。ひたすら我慢して、自分の好きなものを好きだとも言えず、嫌いなものや面白くないものを有難がって、もうこんな歳だ。
この日に、娘に下着を買ってもらうと、娘に下の世話にならなくて済むんですって。
あたしは口をあんぐりと開けてしまった。なんで? なんで? あたしのお母さんなのに。今こうしてニコニコ笑ってて、くるくる働いてるお母さんがなんでそんなことする必要があるの? あたしのお母さんが病気になったり、いなくなったり、ましてやぼけたり死んだりするはずがないじゃない? だって、あたしのお母さんなんだから。

球形の季節を読みながら浮かんだ作品


レビューまとめ

ども。読書エフスキー3世の中の人、野口明人です。
Amazonのレビューや、読書メーターというサイトで、恩田陸らしいというレビューを沢山読みました。恩田陸の作品をまだまだ全然読んでいないし、吉川英治文学新人賞や本屋大賞をとった『夜のピクニック』もまだ未読なので、恩田節というのがわからない僕としては、『六番目の小夜子』と『球形の季節』で判断しないといけないわけですが、それでも充分に恩田陸が好きになりました。
レビューの中で一番頭に残ったのは「走り抜けた先に地面がなかったみたいな感覚」という言葉。あぁ。確かに。フワフワと終わったなと。ただこういう夏目漱石のこころのような結末を最後まで書かないのは嫌いじゃないんですよね。どっちやねん、先生は助かったんか?間に合ったんか?的なラストは。
前回もリドル・ストーリーという言葉を紹介しましたが。
そのラストに至るまでに心を揺れ動かす場面があって、読んでておもろいなぁ、この本終わって欲しくないなぁっていう感じがあると、ラストがフワっとしてもいいのかなと。
まぁ、『六番目の小夜子』の方が個人的にはグワングワン持って行かれましたが。
でもこの作品の方が、なんか色々と人間の感情がぶつけられていて、読みながら、あ、このシーンあれに似てる!やっぱり恩田陸は沢山本を読んでいる作家なんだなと思わせる部分が多かったです。
あ。最後にちょっと個人的な、至極個人的な好き嫌いの話。
別に僕は地方都市に住んでもいないし、閉塞感のある町でもなかったですが、このままどこへも行けずに人生が終わってしまうのではないか…という焦燥感のようなものはずっと持っていたので、感情移入してしまう部分もありました。
そういう感覚だからか、登場人物の坂井みのりの部分だけが読んでいてイライラしました。彼女が一番強いって感じに書かれてはいるんですけどね。くそー!一番強いのはわかるけど、認めたくねーと。
ではでは、そんな感じで、『球形の季節』でした。
ここまでページを閉じずに読んで頂いて本当にありがとうございます!
最後にこの本の点数は…
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球形の季節 - 感想・書評
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球形の季節¥ 590
- 読みやすさ - 69%69%
- 為になる - 74%74%
- 何度も読みたい - 76%76%
- 面白さ - 88%88%
- 心揺さぶる - 83%83%
読書感想文
前作に比べると好き嫌いがハッキリ分かれそうな作品。でも一度ハマるとページめくりが止まらない。荒削りな部分や乱暴な部分が多く、読みにくさもあると思うけど、面白さは安定してある。ぜひ水泳の授業のシーンは読んでもらいたい。