- 著者:ダン・シモンズ
- 翻訳者:酒井昭伸
- 出版社:早川書房
- 作品刊行日:1989年
- 出版年月日:2000年11月30日
- ページ数:920
- ISBN-10:4150113335
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ハイペリオンというダン・シモンズの小説は、「読んだことがない人が羨ましい」と言われるSF小説です。それはどういう意味かと言いますと、この小説、とにかくワクワクがすごいのです。
次から次へと展開していく内容に、ハラハラ・ドキドキ。これからどうなるんだというワクワク。読み終えた後も、ぜひとも内容をすべて忘れてもう一度読み直したくなるほどの小説なのです。
その実、ハイペリオンはヒューゴー賞・ローカス賞・星雲賞と、SF小説文学賞の数々を受賞しております。
…が、しかし。
調べてみるとすぐにわかることですが、このハイペリオンという作品は4部作でして、『ハイペリオン』『ハイペリオンの没落』『エンディミオン』『エンディミオンの覚醒』とともに上下巻、合計8冊、4442ページもある超長編小説なのです。
4442ページ…。見るだけで、腰が引けますよね。「読んだことがない人が羨ましい程の面白い小説」と言われても、読んでいない人にとって、そのページ数は敷居が高すぎる。
ただ!!
その4部作、出すごとに賞を受賞するというすごいシリーズ作品でして、ページ数に怖気づいて読まないのはもったいない!
大抵の作品は続編でコケる事が多い世の中で、このハイペリオンシリーズの何がすごいって、読み進めれば読み進めるほど、面白さが倍増するのです。
僕自身、『ハイペリオン』を読み終えて、おもしれー!となり、『ハイペリオンの没落』を読み終えて、な、な、な、なんだって!?となり、『エンディミオン』を読み終えて、やばい…超面白いじゃん!となり、『エンディミオンの覚醒』を読み終えて、すべてを忘れてもう一度読みたい!となったのです。
そこで今回は、あなたにもぜひその追体験をしていただきたく、総4000ページ超えのハードルを出来る限り下げるレビューをしていきたいと思います。
それでは、4部作の始まりの物語『ハイペリオン』を扱っていきましょう…。
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小説『ハイペリオン』 – ダン・シモンズ・あらすじ
読書エフスキー3世 -ハイペリオン篇-

あらすじ
書生は困っていた。「スペクタクルって言っておけば、何でも良いと思っていませんか…」と仕事中に寝言を言ったせいで、独り、無料読書案内所の管理を任されてしまったのだ。すべての本を読むには彼の人生はあまりに短すぎた。『ハイペリオン』のおすすめや解説をお願いされ、あたふたする書生。そんな彼の元に22世紀からやってきたという文豪型レビューロボ・読書エフスキー3世が現れたのだが…
ハイペリオン -内容紹介-



漆黒の宇宙船のバルコニーで、年代ものだが手入れのいきとどいたスタインウェイのまえにすわり、連邦の“領事”はラフマニノフの『前奏曲嬰ハ短調』を演奏していた。
バルコニーからは沼沢地が一望のもとに見わたせる。その沼沢地をさかんに哮えたてながら駆けていくのは、緑色の巨竜の群れだ。北のほうからは雷雨の前線が迫りつつある。巨大な裸子植物の森は蒼黒い雲の下に黒々と沈み、荒ぶる天に伸びあがる層積雲は高さ九キロメートルにも達しようか。地平線上のあちこちに閃く電光のさざなみ。船にほどちかいところでは、ときおり巨竜のぼんやりした影が遮蔽フィールドにつっこみ、そのたびにギャーッと悲鳴をあげては、あたふたと藍色の闇のなかへ逃げこんでゆく。引用:『ハイペリオン』ダン・シモンズ著, 酒井昭伸翻訳(早川書房)







ハイペリオン -解説-


























































それに輪をかけて事態を複雑にする要素がある。ハイペリオン星系をめざし、〈放逐者〉の群狼船団が接近しつつあることが判明したのだ。船団規模は、すくなくとも四千隻。そして、わが艦隊が到着してまもなく、その狼船団も現地に到着する
P.12


遠く謎めいた惑星で領事を務めた十一年間のあいだに、外世界から訪れた巡礼団は――秘教シュライク教団の許可を受け、北に連なる〈馬勒山脈〉を越えて風吹きすさぶ曠野に〈時間の墓標〉をめざす巡礼団は――十組以上を数えた。だが、もどってきた者はただのひとりもいない。平常時ですら――時潮や、だれにも理解できない謎の力、さらには抗エントロピー場などにより、シュライクが行動を封じられ、〈時間の墓標〉周辺数十メートルの範囲しか動きまわれなかった平常時ですら――そんなありさまだったのだ。おまけにあのころは、アウスターの侵略などという脅威も存在しなかった。
P.17


現在、パールヴァティーの森霊修道会が、聖樹船〈イグドラシル〉の出航準備を進めている。救出艦隊には、同船の通貨を許可するよう通知ずみだ。〈イグドラシル〉が出航して量子リープを行うのは、〈ウェブ〉時間で三週間後。それまでにパールヴァティーに赴けば、宇宙船ごと収容してもらえる手はずになっている。シュライク教団の選んだ他の六人の巡礼も、この世樹船に同乗していく。ただし、情報部の報告によれば、七人の巡礼のうちすくなくともひとりは――アウスターのエージェントだという。われわれは……現時点では……そのひとりがだれなのか、さぐりだすすべを持たない
P.14











































































批評を終えて











いつもより少しだけ自信を持って『ハイペリオン』の読書案内をしている書生。彼のポケットには「読書エフスキーより」と書かれたカセットテープが入っていたのでした。果たして文豪型レビューロボ読書エフスキー3世は本当にいたのか。そもそも未来のロボが、なぜカセットテープというレトロなものを…。


名言や気に入った表現の引用


「アウスターの意図など、だれにもわからない。彼らはもはや、人間の論理に基づいて行動しているわけではないんだから」
手にしたグラスの縁からワインがこぼれるのもかまわず、マーティン・サイリーナスがげらげら笑った。
「うっひゃひゃひゃ、こいつはいい! まるでろくでもない人類が、いままで人間の論理に基づいて行動したことがあるみたいじゃないか!」P.31
じつのところ、余命があと一週間しかないといわれても、ぼくはさまざまな謎に心惹かれずにはいられない。謎が解ければそれに越したことはないが、たとえ解けなかったとしても、謎解きに挑戦するだけで充分だ
P.43
ときとして、善意に基づく熱意と背教のあいだには、紙ひとえのちがいしかないものです
P.50
この一週間、ずっといだいていた恐怖もおおむねやわらいできた。何日もアンチクライマックスがつづくと、恐怖でさえも薄れてしまうものらしい。
P.93
たしかに、生きることは神聖だ――生きることがごく安っぽいものになりはててからの二千八百年間、教会がつねにそう考え、そう教え導いてきたことからもわかるように、それは教会の原理のひとつであり、わたしとていまもそれに執着してはいる――しかし、それよりもっと神聖なのは、魂だ。
P.164
暗黒のなかに歩みいるのであれば、毅然と――雄々しく、たしかな信仰心をもって――進まねばならぬ。死の収容所のなかで、核の炎のなかで、癌病棟で、ユダヤ人大虐殺のさなかで、孤独な静寂につつまれ、何世代も何世代ものあいだ、死に直面しながらも信仰心を失わず、希望こそいだかぬにせよ、これらのすべてにはなんらかの理由があるのだ、これほどの苦しみを味わい、これほどの犠牲をはらうだけの意味があるのだと祈りながら、暗黒を見すえつつそのあぎとへと歩んでいった、何百万もの先人のように。論理も事実も納得のいく理屈もなかった先人らが暗黒のただなかへはいっていくさいには、それこそごくごくかぼそい希望の糸と、いまにもゆらぎそうな信仰心しかなかったにちがいない。しかし、その先人たちが暗黒をまえにしてわずかな希望をつなぐことができたのなら、わたしにもまたおなじことができるはずだ……
P.165
どんなことであれ、最初に出会ったとき、その対象を心で学べ
P.328
初期の小生の詩たるや、じつにひどいしろものだった。たいていの三流詩人がそうであるように、小生もその事実に気づかず、創作という行為そのものによって、小生が生みだしていたなんの価値もない愚作群にもなんらかの価値が付与されるなどと、傲慢にも思いこんでいたものさ。
P.330
公表という苛酷な踏み絵を踏むまでの、おのれの詩人や作家としての才能に対する思いこみは、自分は死なないという若者の思いこみに似て、ナイーブで無害であり……やがてかならず訪れる幻滅もまた、同質の苦痛に満ちている。
P.331
詩人の真価は、有限な表現による言語の舞いではなく、知覚と記憶、知覚されるものと記憶されるものへの感受性、それらのほぼ無限の組みあわせにこそある。
P.336
“現実に対して生み落とされる狂気――その産婆が詩人だ。詩人はありのままの現実、その現実のなりうる姿を見ようとはしない。そのあるべき姿のみを見る。”
P.341
二十世紀オールドアースのファーストフード・チェーンでは、死んだ牛の肉を仕入れて、脂を敷いた鉄板の上で焼いて、発癌物質を添加したうえに、石油ベースの発泡材でつつんだものを、九千億個も売っていたのよ。それが人間なの。そういうものなのよ
P.365
もちろんソルは、サライに出会うまで、自分が孤独だなどと思ったことはなかった。だが、はじめて彼女と握手をかわし、同時にそのドレスにフルーツカクテルをこぼしてしまってからは、じつは自分が孤独であり、彼女と結婚できなければ人生はむなしいままだと悟ったのだった。
P.11 (下巻)
かつては承知していたのに、いつのまにかわすれてしまっていたことだが、ソルは改めて、小さなコミュニティのありがたみを実感した。地域社会は干渉的なことも多く、例外なく偏狭で、ときに個人レベルで詮索的なこともあるが、いわゆる“民衆の知る権利”なるたちの悪い遺産を行使したことはいちどもなかったのである。
P.85 (下巻)
人生の五十五年間を倫理体系にかかわる物語の研究に捧げてきたソル・ワイントラウブは、いま、ひとつのゆるぎない結論に達していた。無垢なる者に対し、慎みあるふるまいよりも服従を優先するような神、概念、もしくは宇宙原理は、すなわち悪だということだ。
P.94 (下巻)
――だが、はたから見えないからといって、ソルよ、それが存在しないとはかぎらない。
――ぶざまな言い方だな。なにかをいうのに、三つも“ない”を重ねるのはよくないぞ。とくに、さほど深みのないことをいうときにはな。P.120 (下巻)
ルーサス人の強引さは胃洗浄器なみだが、倍もたちが悪い
P.220 (下巻)
“もしや超存在なるものがいて、ぼくの精神が陥る優美な、しかし本能的な態度というものをおもしろがっているのではないだろうか。ちょうどぼくが、オコジョの警戒や鹿の不安をおもしろがるように。路上での喧嘩は憎むべきものだが、そこに見られるエネルギーはすばらしい。超存在にしてみれば、人の考えや反応もおなじように思えるのではなかろうか――あやまってはいるが、すばらしいものであると。そしてそんな反応こそは、詩を詩たらしめるものなのだ”
P.245 (下巻)
人生、安全なんてものはないのさ
P.259 (下巻)
ものごとを知るためには、まっとうな暮らしを送らなければならないの。アーロンのおかげで、それがわかったわ。子供を育てるということはね、現実とはなにかという感覚を研ぎ澄ます効果があるのよ
P.364 (下巻)

ハイペリオンを読みながら浮かんだ作品


レビューまとめ

ども。読書エフスキー3世の中の人、野口明人です。
ハイペリオンシリーズを読み終えた〜!
ぶっちゃけ、僕自身に色々とあったので8冊すべてを読み終えるのに9ヶ月ぐらいかかりました。僕の人生で一番長い作品だったんじゃないかな…。
それにしてもこのハイペリオンシリーズのすごい所は9ヶ月と長く期間がかかったのも関わらず、用語や登場人物がわからなくならない所でしたね。
普通、読書に時間をかけてしまうと、「あれ?これ誰だっけ?」とか「ん?なんだこの単語は…」ってなってしまうんですが、この作品はとにかくいつ読み始めても、すぐにその世界観に戻っていけるんです。
それは出てくる登場人物すべてがキャラが濃いっていうか、愛すべきキャラクターたちで、特にこの『ハイペリオン』に出てきた巡礼者たちは、のちの『エンディミオン』の方では伝説の人物として扱われる存在にも関わらず、本当に人間臭いキャラなのです。
キャラが立っている作品って、やっぱり面白いですよね。例えば、ドラえもんのジャイアンといえばこんな性格って頭に浮かぶじゃないですか。あーゆーキャラがとにかく多い。
そしてそういうキャラが多いと、ドラえもん的というか、とにかくずっと触れていたい、終わって欲しくない作品になると思うんです。
しかも、驚くべきはその設定の濃さです。
文章の映像化というんでしょうか、文字を読んでそれを頭の中で想像するだけで楽しくなってくる。こういう未来が来たら本当にすごいなぁ〜と思ったり、あ!なんかこの設定あれに似てない!?なんて事を思いながら読むのが本当に楽しかったです。
漫画で言えば『攻殻機動隊』や『寄生獣』、映画で言えば『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』とか『ターミネーター2』などなど、読みながらふと頭に浮かんできました。
それになんと言っても、惑星間をどこでもドアで移動できるんですよ。洒落ているのは、家の中の至るところにどこでもドアを設置して、お風呂は水星、居間は土星、トイレは海王星なんて事をやっている世界なのです。
すごい世界ですよね。SFが苦手とか思っていた僕も、この設定には胸をときめかせました。
そしてシュライク。もうどう考えてもジョジョです。時間を操るとか、最強です。スタープラチナ・ザ・ワールド!
この『ハイペリオン』では、まだまだシュライクは謎の存在ですが、シリーズを通してシュライクは登場し続けます。そして徐々に僕らは殺戮者であるシュライクでさえも好きになってしまうのです。
僕はきっと一生忘れないでしょうね、「シュライク」という単語を。
ではでは、そんな感じで、良ければハイペリオンシリーズの入り口であるダン・シモンズの『ハイペリオン』をぜひ読んでみてくださいませ。文句なしにおすすめです!
ここまでページを閉じずに読んで頂いて本当にありがとうございます!
P.S.
…あ、翻訳については全然触れませんでしたが、とにかく読みやすかったです。そして巻末の解説も面白いです。
ではでは。
最後にこの本の点数は…
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ハイペリオン - 感想・書評
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ハイペリオン
- 読みやすさ - 97%97%
- 為になる - 71%71%
- 何度も読みたい - 98%98%
- 面白さ - 99%99%
- 心揺さぶる - 87%87%
読書感想文
ハイペリオンシリーズの最初にして、枠物語という特殊な書き方をしている『ハイペリオン』は、6人に物語を語らせることで、これから始まる壮大な物語の登場人物や設定などを様々な面から描き出して、読者にわかりやすく楽しく紹介している作品。読み進めていくうちに積み上がっていく不思議な謎たちは、次作から徐々に解明されていき、すべてを読み終えた後は何にも代えがたいカタルシス体験をもたらしてくれます。大掛かりにな前フリにして、その前フリでさえもワクワクドキドキが止まらない『ハイペリオン』を是非!